Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
997 / 1,142
- 27章 -

- 謹賀新年-

しおりを挟む


「さて、起こすかっ!」

「そうですね。睦月と綾雪は放っておいて良さそうですけど、学君はどうか分かりませんし」

「しっかりしてそうなお家だもんねぇーっと、そうだっ!後片付けありがとう!!ごめんね寝ちゃって(;´д`)」

「いえいえ、かまいませんよ。お気になさらず」


申し訳なさそうにソファーの上で頭を下げる安積の肩に手を置きゆっくりと立ち上がった班乃は、気持ち良さそうに寝ている鈴橋に歩み寄る。

向かい合う様にして眠る鈴橋と植野の前にしゃがみ込み、手を伸ばし触れる瞬間、鈴橋の手首に〝らしくない〟モノが着けられているのに気が付いた。

『あれ? 前にアクセサリー類は好きじゃないって…って、あぁ、これはもしかしてー』

スっと植野の手首へと視線を移すと、同じモノが着けられているのが見える。ダークシルバーで小さなストーンが嵌め込まれているシンプルな物だ。よく見れば、同じものだが、ストーンの種類は違うようだ。

『そういえば、参道でー…』
 
安心出来るなにかを持とうという話をしたと、鈴橋が言っていたのを思い出す。

『成る程。ストーンは…誕生石かなにかですかね』

中途半端な関係が長らく続き、色々と悩みのある時間が続いていたのを知っているだけに、順調に進んでいる2人の関係を表すようなその光景が、自分の事のように嬉しくなる。

『ほんと、良かったですね。綾雪…』

人知れず笑みを浮かべながら、袖を引っぱり然りげ無くブレスレットを隠した班乃は、驚かせないように静かに声をかけた。


「……ぁ、おはよぅ、ございます。かいちょぅ…」

「はい、おはようございます。気持ち良さそうに寝ている所申し訳ないのですが、19時過ぎたので一応声かけておこうと」

「…もう、そんな時間……ありがとぅございます、起こして…くださって…」


寝起きの目を擦りながら、いつもそうしているかの様な極自然な流れで植野の髪をひと撫でしたのち、枕元に置いていた携帯に手を伸ばそうとした鈴橋だったが、即座に自分の行動に気がつきパッと顔を上げた。

あの、その…と小さく口にし、控目な狼狽を披露する姿に思わず声を出して笑いそうになるが、なんとか噛み殺し笑顔だけを向けた。


「大丈夫ですよ。僕しか見てませんから」

「……すいません」


班乃は市ノ瀬に声をかけに行きコチラを見ていない安積を視線でさし示し、小さく囁くと、羞恥と安堵を織り混ぜたような複雑な表情を浮かべる鈴橋に植野を起こすように頼み、自身は帰宅の準備に取りかかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...