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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む「さて、起こすかっ!」
「そうですね。睦月と綾雪は放っておいて良さそうですけど、学君はどうか分かりませんし」
「しっかりしてそうなお家だもんねぇーっと、そうだっ!後片付けありがとう!!ごめんね寝ちゃって(;´д`)」
「いえいえ、かまいませんよ。お気になさらず」
申し訳なさそうにソファーの上で頭を下げる安積の肩に手を置きゆっくりと立ち上がった班乃は、気持ち良さそうに寝ている鈴橋に歩み寄る。
向かい合う様にして眠る鈴橋と植野の前にしゃがみ込み、手を伸ばし触れる瞬間、鈴橋の手首に〝らしくない〟モノが着けられているのに気が付いた。
『あれ? 前にアクセサリー類は好きじゃないって…って、あぁ、これはもしかしてー』
スっと植野の手首へと視線を移すと、同じモノが着けられているのが見える。ダークシルバーで小さなストーンが嵌め込まれているシンプルな物だ。よく見れば、同じものだが、ストーンの種類は違うようだ。
『そういえば、参道でー…』
安心出来るなにかを持とうという話をしたと、鈴橋が言っていたのを思い出す。
『成る程。ストーンは…誕生石かなにかですかね』
中途半端な関係が長らく続き、色々と悩みのある時間が続いていたのを知っているだけに、順調に進んでいる2人の関係を表すようなその光景が、自分の事のように嬉しくなる。
『ほんと、良かったですね。綾雪…』
人知れず笑みを浮かべながら、袖を引っぱり然りげ無くブレスレットを隠した班乃は、驚かせないように静かに声をかけた。
「……ぁ、おはよぅ、ございます。かいちょぅ…」
「はい、おはようございます。気持ち良さそうに寝ている所申し訳ないのですが、19時過ぎたので一応声かけておこうと」
「…もう、そんな時間……ありがとぅございます、起こして…くださって…」
寝起きの目を擦りながら、いつもそうしているかの様な極自然な流れで植野の髪をひと撫でしたのち、枕元に置いていた携帯に手を伸ばそうとした鈴橋だったが、即座に自分の行動に気がつきパッと顔を上げた。
あの、その…と小さく口にし、控目な狼狽を披露する姿に思わず声を出して笑いそうになるが、なんとか噛み殺し笑顔だけを向けた。
「大丈夫ですよ。僕しか見てませんから」
「……すいません」
班乃は市ノ瀬に声をかけに行きコチラを見ていない安積を視線でさし示し、小さく囁くと、羞恥と安堵を織り混ぜたような複雑な表情を浮かべる鈴橋に植野を起こすように頼み、自身は帰宅の準備に取りかかった。
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