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慰弦

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- 27章 -

- 謹賀新年- .

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「…お2人が誕生日を祝ってくれた事や、一緒にお墓参りをしてくれた事…貴方が僕にくれた沢山の言葉のおかげで、色々と考える事が出来た。だからこそ、今度こそ僕は前を向く事が出来たんです。それは僕だけじゃなくて、きっと楓も」

「…ゃ、そんな、俺は大したことなんて、なにも」

「僕にとっては、大きな事だったんですよ。幸せだった事も、辛かった事も全て含めて、彼女は僕の思い出として、漸く僕の一部になれた気がしたんです。そしたら…なんて言うんでしょう?今までみたいに別々の物として持っているのが不自然に思えて…」

「…別々の物?」


不思議そうに首をかしげる安積に伝わるように、胸元に手を当てて見せると、即座に理解したような納得の声がもれた。


「それで自然な形ってなんだろうって考えてみた結果ー」


見せつける様に耳ともに手を当てると、安定していない痛みにしかめそうになる顔を何とか誤魔化し、出来うる限りの笑みを作った。


「1回溶かして、1つにして、繋いじゃいました。って感じです」

「繋いじゃいましたってww」

「……似合うでしょ?」

「…うんっ、すごくっ!」


おちゃらけたような言葉で笑みを浮かる班乃だったが、そこにはどこか寂しさが含まれているように見えて…

そんな笑みに、安積も同じように笑い返した。

嬉しいのに悲しくて、なんだか泣きそうになる。

『医大目指すのって…もしかしたら自分達みたいな人を減らしたいから、なのかな?』

前を向き歩き始める事は良い事なのに、悲しさをも伴うなんて、なんて酷な事なんだろう。

でもこの矛盾こそが、成長するという事なのかもしれない。

自身の耳に触れる班乃の手に、自らの手を重ねた安積はそっとすべらせると、その手に寄り添うようにして班乃の顔が傾いた。


「だからね、ありがとうございました。…貴方に会えて、本当に良かった」


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