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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む少し前に会社でついたというお餅を月影から大量に貰ったばかりで、冷凍保存した所で食べきる自信もなかったので丁度良かった。
「疲れたでしょ?座って休んでてっ!」
「……悪い」
「あぁ、座布団ソファーにあるから適当に使えよ」
「めっちゃ自分家みたいに言うねっw」
「まぁ、似たようなもんだしな」
『通い妻っww』
手洗いを済ませ入るや否や、ごく自然な流れで台所へと直行し各々動き始める演劇部組を横目に、植野と鈴橋はお言葉に甘えて借りてきた猫のようにテーブルへとついた。
といより、鈴橋は倒れ込む様に突っ伏し、大きいため息をついた。
「お疲れ様、がっくん」
「……ん」
植野の労いの言葉に一文字で返事をし、漸く一息ついた鈴橋は、疲労により忘れていた空腹を唐突に思い出す。
それもその筈だ。朝早くから出掛けて、なんだかんだ食べたのは煎餅1枚とソフトクリームのみだ。お腹が空かないわけはない。
「睦月、これ2人に持ってたげてっ!」
「ん」
台所から聞こえた声に、なんか夫婦みたいだなと植野が1人笑みを浮かべていると、安積に促され市ノ瀬が湯気の立つカップを2つテーブルに置いた。
「さっき買った蜂蜜のやつ。暖房効くまで寒いだろうからって」
「ありがとむっちゃん!せーちゃんもっ!!」
「どういたまっ!」
「…頂きます」
再び台所へと消えていく市ノ瀬を見送り、植野はカップへと視線を落とす。アセロラの香りが優しく鼻を抜け、1口含めば予想外な甘さが広がった。
「赤じゃなくて黄色ってのにも驚いたけど、味も…全然酸味ないんだねぇー。意外…」
「そうだな…ホッとする味してる。でもなんか、なんだろ。眠たいんだかお腹空いたんだか…よく分からなくなってきた」
「確かにw」
喉を通り体に広がる暖かさが眠気を誘い、胃にモノが入いった事で余計に空腹も増す。強烈な眠気と空腹が同時に襲い、それでも不思議と訪れる安らぎに、どちらを優先したいのか分からなくなる。
「がっくん達はお餅何で食べる??」
「あっ、ごめんねっ!何も手伝わないでっ」
お邪魔している身で何も手伝わずダラダラしているのは申し訳ないけれど、全員で台所に入るのは難しそうで、そわそわするしかないのがもどかしい。
「良いの良いのっ!気にしないでゆっくりしててよ!!あっ、お餅色々あるよー!きな粉とアンコと、大根おろしと、納豆、みたらしとぉー…ちょっと時間かかるけど砂糖醤油も!あとお雑煮!昨日作った!なにが良い?」
「いっぱいあるねっww」
「殆んど聖が置いてったやつw」
「……納豆と雑煮。…と、みたらしも気になるな」
「俺も同じのでっ! あときな粉お願いします!」
「おけ!任せてっ!!」
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