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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む現場に居なかった安積と市ノ瀬2人は、いったい何があったのかと不思議そうな表情を浮かべていたが、本人があまり言いたくなさそうにしている上、どうしても知りたい事でもないしと、敢えてスルーする事にした。
そんな安積の空気読みと、市ノ瀬のある種のドライさに感心しつつ、班乃は不安げにしている鈴橋へと笑顔を向ける。
「良いですよ、キャッチボール。せっかくですし、皆でやりませんか?」
「良いねそれっ!なんで急にキャッチボールなのかはよく分からないけど、楽しそうっ!!」
「たまにやると面白いやつだよな」
「それねっw でもせーちゃんは大丈夫なの?」
「大丈夫だよっ! 球追っかけて走り回らなけらばw」
「……絶対に安積にはボール投げない」
「なんでよぅっ!? 仲間外れ良くないっ!!」
「大丈夫、これがっくんなりの優しさだからww」
優しさ、優しさ?
と植野の言葉を確かめるように鈴橋へと視線を向けた安積だったが、秒で顔を反らされてしまった。
以前なら、何か機嫌を損ねる様な事を言ってしまったかな?と思っていた所だが…
正解を確かめる様に、再び植野を見た安積はー
「これは照れてるが正解?」
「気まずさと照れくささと不甲斐なさとって感じ?w」
「絶妙に語呂悪くて気持ちわりぃなw」
「…疲れた。早く帰ろう。それに寄るんだろ。蜂蜜屋」
このままこの会話を続けているのも居たたまれない。話題を打ち切るために、鈴橋は来る時に安積が言っていた話題を持ち出すと、安積の目が秒で輝いた。
「寄るっ!!寄る寄るっ!!覚えてくれてたんだっ!嬉しいっ!!」
「…記憶力はいい方だ」
「そーゆー問題じゃないけど、まぁいっか!!」
記憶力云々ではなく、あの鈴橋が自分の言葉を覚えていてくれた事が嬉しかったのだけれど、勿論それもなんだけれど、蜂蜜への気持ちが勝り、訂正はせず足早で最後の人集りへと足を踏み入れた。
人混みを進み蜂蜜屋へと赴き、寒空の下寒い寒いと騒ぎながら、蜂蜜のたっぷりかかったソフトクリームに舌鼓し、行きよりもいくぶんか空いた電車に揺られ、一行がたどり着いたのはー
「あれ、安積?」
「うん?」
「ついに買ったんですね、キーケース」
「そう! 買ったんじゃなくて貰ったんだけどね!」
「それは良かった。いつも裸のままポケットに突っ込んでるから心配してたんです」
「……同じこと言うなよなぁ」
「え?」
「なんでもない」
演劇部にとっては通い慣れた、鈴橋と植野に至っては初めましてな安積宅だった。あまりの疲労に死にそうな顔をしていた鈴橋に、帰り道だし少し休んでいかないと提案し今に至る。
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