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慰弦

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- 27章 -

- 謹賀新年-

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「…明、なんかごめん」

「いえ、大丈夫です。貴方がある種の事に関して異様な程早計で頭が回らなくなるのは理解してますから」

「ある種の事?」

「安積は気にしなくて良いと思う」

「えっ、仲間外れっ(。´Д⊂)」


腑に落ちた。成る程、今ならよく分かる。
市ノ瀬は今までの事を思い返し、だからだったのかと、1人すっきりとしていた。

鈴橋と2人きりで話していた時や、なにかしらで鈴橋に触れた時等々、異様な程に植野が反応していたその意味は、分かってしまえば何故気がつかなかったのか不思議な程だ。


「失礼な態度も怒らず許容して、全員を愛してるなんて言えるなんて、流石です会長…本当、慈愛深くて驚く」

「「「…………慈愛??」」」

「いやいや、慈悲なんて大袈裟ですって。嬉しいですけど、そんな誉められると流石に照れまー」


照れますね。

そんな言葉を遮ったのは、植野と市ノ瀬の高々に轟く笑声だった。


「…ちょっと2人とも。そんなに笑う所です??」

「ぃやっ、だっ、だって慈愛ってっwwお前がっ!?w」

「慈愛ってっww 明が慈愛ってっw」

「……おかしいですね。お2人にも結構な愛を持って接していた筈なんですけど」


お腹を抱え、時折指を指し笑い転げる2人に、なにもそこまで笑わなくてもと若干の悲しさを覚える。確かに市ノ瀬とは安積の事で色々とあったし、植野には少しばかり意地悪をしたことはあったけれど……


「……慈愛。慈愛ね……慈愛かぁ」

「えぇー……貴方まで…?」


笑い転げる2人とは違い、なにやら携帯に視線を落とし黙って聞き入っていた安積が、視線をあげ腑に落ちない顔で呟いた。


「常に慈しみの心を注いで可愛がる心、かぁ」

「…………」


意味を調べていたのだろうか?
小首を傾げ自分を見上げる姿が居たたまれない…
安積に対しては親が子にという意味でもなく、友達でという気持ちでも意味でもなく、本当の意味で“愛”を持っていた。

それ故にやらかしてしまった事はあったけれど……

『ぃや……確かに、その分やらかしは大きかったですけど…って、あれ…もしかして僕って自分で思ってるよりもずっと、優しくもなければ大人でもないのかも…』

思い返してみると、誰に対しても優しく愛を持って接してはいた、と、けれどがついてしまっている事実に今更ながら自覚させられる。


「…すいません学君。僕は貴方が思って下さっているほど立派な人間ではないようです」

「あっ、待って違うのっ!間違いではないと思うけど、それだけじゃなくって…」


人に優しくのモットーが崩壊し、していたになっていたと言う新事実に落ち込む班乃に焦るではなく、安積は他にもっと適切な表現があるとでも言いたそうな表情でその顔を覗き込んだ。
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