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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟むそして安積達とはぐれてしまった事や、植野にそんな心配をかけていた事にも気が付いて居ない班乃と鈴橋は、尚も会話を続けていた。
「何はともあれ、皆楽しめたのなら良いじゃないですか。僕も楽しかったですよ」
「そうですか…それなら良いのですけど」
「ほんと、一生懸命…」
中途半端に言葉を区切った班乃は、少し身を屈め、誰にも聞こえてしまわぬようにと、鈴橋の耳元へと近づきー
「恋してるんだなぁって」
「っ!」
そう小さく呟いた。
耳を擽ったその言葉にバッと顔を上げた鈴橋は、班乃を見上げる。あまりにストレートな表現に羞恥心が駆り立てられるが、それも一瞬の事だった。目があった班乃のその顔に、その優しそうな微笑みに…
「…会長の後ろに大国主が見えた気がしました」
「え、おおくに…?」
深い慈愛を見た気がした。
「なんだか、会長はいつも人の事ばかりですね」
「そうですか?そん事ないと思いますけど」
「ありますよ。本当、いつも助けられてばっかりで…会長は恋、してないんですか?」
「えっ、僕?…僕は、そー…ですね」
いつも人の為と動く人にこそ幸せであって欲しい。以前恋人が居ると言っていた事を思い出した鈴橋は、何気なしに班乃に問うてみたのだが…
なんだか煮えきらない班乃の態度に、もしかしたらうまく行っていないのだろうか、余計な事を言ってしまったのではないかと心配になる。
そんな鈴橋の言葉に、人波が落ち着き圧迫から抜け出せた所で後ろを振り返った班乃は、ようやく他の3人が来ていないことに気が付く。
今しがた通ってきた道を目だけで振り替えると、少し離れた所で懸命に手を上げ存在をアピールする安積を見つけ顔が綻んだ。
『恋……恋かぁー…』
恋とは少し意味は違うけれど、それでもー
「してますよ。今を懸命に生きる人達に」
「それは、どういう…?」
「頑張るって、凄く難しい事だと思うんです。なので何かに対して懸命に生きる人達を尊敬してますし、大好きなんです。僕はそんな人達や、僕が大切だと思う人達、安積や睦月、綾雪や、そして」
「良かったっ!漸く追いt」
「学君を、愛してますよ」
真っ直ぐに相手だけを想い、大切にし、純粋に愛し通す。自分には出来なかった、そんな事を懸命に体現する彼等が眩しくて、尊敬し、愛おしいと思う。
「「「……………」」」
「…よく、恥ずかしげもなくそんなこと
…って、どうした?」
無事携帯を救出し終えようやく追い付いた3人は、合流早々耳にした言葉に絶句するしかない。
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