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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む「や…だって、ほら…滝探して無駄にうろうろさせちゃったかなって…」
「…あぁ、それ。どっちにしろ浮御堂には行くつもりだったんだろ?」
「それは、そうだけど…」
「うろうろしたって言ってもほぼ一本道だったし」
「そこまで無駄に歩かされた訳じゃない。だから別に謝らなくても良い」
「がっくん……」
「そうですよ。入口直ぐに滝の案内板はありましたけど、どっちにしろぐるっと回って戻って来る事には変わりないですし」
「……えっ?」
入口直ぐ??
「まぁ、先に行くか後に行くかだけの違いでしたしね」
「「「「…………」」」」
「なにか?」
器用に先人を切って人混みを進みつつ、涼しい顔をして吐き捨てた班乃の言葉に、一同口を継ぐんだ。
書道美術館に付くまでの間、皆で終始滝は何処だと探しながら歩いて居たのにも関わらず、早々に気がついていた案内板を黙って居たなんて…
「ちょっとあっきー…気づいてたなら言ってよぅ」
「え? あんなに堂々とあったのに、本当に気が付いてなかったんですか?? …僕はてっきり気がついてない振りしてたのかと」
「うっ……」
「「「…………」」」
「でもまぁ、周りに気がつかないほど夢中になれるなにかがあるのは良いことだと思いますよ」
「……なにか?」
「がっくん、多分それ突っ込まない方が良いやつ…」
少し強調された班乃の言葉に反応する恋人の肩に手を置いた植野は、不思議そうに振り向く顔に曖昧に笑って誤魔化した。きっと、“ なにか “ ではなく ” 誰か ” と 言いたかったのだろう。
皮肉なのか、本心からなのか…
「Σ あっ、やばっ、ちょっと待ってっ!」
「どうしたせーちゃん?」
「携帯落っことした(;´д`)」
「えっ、大丈夫っ!?」
「すっ、すいません、ちょっと…」
この後の予定はどうしようかと時間を確認し、ポケットに仕舞おうとした携帯は、まるで中に入る事を拒絶したかのように、見事に地面へと落下して行った。慌てて立ち止まり拾おうと手を伸ばすが、通りすがる人波にうまく拾い上げる事が出来ない。
人混みと喧騒の中、先頭を歩るいて居るが故に後ろの出来事に気がつかず、足を止めることなく人の波に消えていく班乃と鈴橋の後ろ姿に、植野は小さくため息をついた。
『あっきーに弄られてなきゃ良いけど…』
心配だけれど、班乃に限って鈴橋を傷つけるようなことは言わないだろう…多分。自分でも言っていたが、弄る人は選ぶ筈だ。携帯を踏まれ壊れてしまっては大変だしと、植野は安積と共に落ちた携帯を救出に向かった。
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