Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
982 / 1,142
- 27章 -

- 謹賀新年-

しおりを挟む


「あぁ、これは綺麗ですね。キラキラと光って…スノードームみたいです」

「でしょっ!さすがあっきー!! 睦月ってば何度見ても苔!しか言わないから」

「まぁ、間違ってはないですけどねw」

「悪いな、美意識高くてちょっとやそっとのもんじゃ心動かされねぇんだわ」

「ですって。良かったですね、安積」

「……なんで俺に振るのよ」

「まぁ、感受性低いとも言えますけどね」

「最後の余計だぞそれ」

「お前がそれ言う??」


軽快に喋りながらも数枚写真を撮り、お邪魔しましたと含みのある笑顔で颯爽と去ろうとする班乃を制止すると、特に見るものも、ないしと共に外へと出た。

滝から少し離れた場所で、眼鏡を空にかざし汚れを念入りに拭く鈴橋と、その隣で目をつぶり幸せそうに微笑む植野と合流を果たすと、そろそろ帰ろうと出口へ向かった。のだが…


「……これ、登るのか」


名残惜しさを残しつつ滝を後にし、出口方向へと目を向けた鈴橋がげんなりしたように呟く。そこには、1段1段の幅が広い階段が、頂上が見えない程に続いていた。


「頑張れがっくん!これ登ったら直ぐ出口だからっ!」

「こういうのはプラスに考えんだよ。ずっと坂になってるよりはるかにマシだろ」

「それは…まぁ、そう、だけど」

「ならがっくん!おんぶしたげよっかっ!? 背中ここ、空いてますよっ!?」

「寝言は寝て言え」

「ひどいっ!?」

「でしたら手、お貸ししましょうか?」

「あっ…いえそんなっ、会長の手を煩わせるわけには」

「なにこの対応の差っ!?」


全員に見守られ励まされながら、今にも死にそうな顔で足を引きずるように頂上目指す。

そんな光景を1番後ろから眺めた安積は、ここに皆で来れた事に、一緒に来てくれた皆の優しさに感謝の笑みを浮かべると、思い出の1枚を写真に残し、皆の背中を追いかけた。


「……あれ、ここって」

「もしかして…大本堂??」

「…………」


公園を出て再び相まみえた人混みにうんざりしつつも、後はちょろっと寄り道して帰るだけだと気合いをいれ歩き始めると、直ぐに見覚えのある光景が目に入る。


「と言うことは、あれか。大本堂挟んで両側に入口あったってことか」

「で、滝はこっちの入口付近だったって事ね」

「……ごっ、ごめんっ、がっくん!!」

「は?なにが?」


入口は2ヶ所あって、滝は入口近くにあったはずと安積が言っていたのも間違いではなく、ただその入口が違う場所だった。

ただそれだけだった。

特段それになにかを思うわけでもなく “ だだそうだったのか ” くらいにしか思ってはなかった鈴橋は、突然肩を掴み焦ったように謝罪する安積に分けもわからず聞き返すとその目が泳いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

処理中です...