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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む1度言葉を区切り前を歩く2人を見つめると、市ノ瀬が居ないに気がついた2人が振り返り手を上げた。それに応えるように市ノ瀬も手を上げると、植野へと視線を向ける。
「俺達はこれで良いんだわ」
「むっちゃん…」
「心配どーも」
ポンッと植野の肩を叩き笑顔でお礼を口にすると、安積達の元へと足を早めた市ノ瀬だったが、2~3歩進んだところで足を止め、再び植野の隣へと並んだ。そしてー
「あえて俺が言う事じゃねぇかも知れねぇけど、学は嘘も言わねぇし、歯に衣着せることもしねぇ奴だろ。良くも悪くもさ。そんな奴に好きだって言われたなら、自信しか持たなくて良いだろ、そんなん。信じてやれよ、恋人だろ?」
それだけ言うと、返事も待たずに今度こそ安積達の元へと小走りで去っていった。その道中、安積達の少し後ろをマイペースに歩いていた鈴橋と短く会話を交わした市ノ瀬は、空を見上げると安積達と合流し、何やら空を指差した。
「……どうした、綾雪?」
「えっ、あぁ…なんでもない。ただ、むっちゃんが良い奴だなぁーって思って」
「まぁ、そうだな?」
演劇部組をぼんやりと眺めつつ、遅い足取りで歩いていた植野に歩調を合わせ横に並んだ鈴橋が心配そうに問うが、植野の答から悪いことではなかったのなら…と話題を切りあげ、ぱっと空を指差した。
その指先に誘われるように空を見上げるとー
「おぉー…見事な飛行機雲!」
「な。最近、あんまり見なかったから。綺麗だ」
「…そうねっ!」
先程猫を写真に納めていた時と同じような表情を浮かべ、真剣に写真を撮りながら歩く鈴橋にトキメくなと言う方が無理だ。
出掛けたとしても、下校後に近場のデパートや本屋、公園に立ち寄るくらいで、こういった場所に来るのは何気に始めてだ。鯉に遊び猫に飛行機雲に顔を緩ませ静かに喜ぶ。
付き合っていると言ってもそんな姿を見れたのはほぼ初めてで、様々な姿にどんどんと好きが積み重なっていく。
「今日、皆とここに来れて良かった」
「そうだな。たまには悪くないなこういうのも。
ーでも……正直そろそろ帰りたい」
「がっくんいっぱい頑張ってるしねw」
本心をありありと表した深く長い鈴橋の溜め息に苦笑するしかない。苦手な人混みを散々歩き、そんな中での迷子や浮御堂でのトラブルと、立て続けに起こってしまえば、そうなってしまってもしょうがないだろうけれど。
「多分この後まだどこか行くだろうし、俺達は休憩所で休んでる?」
「なんでお前もだよ」
「一緒に居たいからに決まってるじゃん」
「…そう、か。いや、でも…いい。大丈夫。今日は頑張る日だから」
「なにそれw 良く分からんけど可愛いのだけは分かるっw」
「意味分からん…」
「まぁまぁw じゃぁ、頑張れがっくん!!」
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