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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟むくんくんと匂いを嗅いだ後、スンっと顔を背け、安積の事など微塵も興味はないとでも言いたげに、再び寝る体制へと入っていく。
鼻先から頬に、首に、背中にと恐る恐る手を滑らせると、逃げはしないが尻尾の先端だけがピクピクと動いた。
「これってどーゆー気持ちなんだろ??」
「さぁ? 気にはなってるけど反応返すの怠いなぁー…みたいな感じですかね?あまり構いすぎると逃げられるか噛まれるかするかも」
「猫怖っ!!w」
噛まれるのも悲しいし、微睡みを邪魔しても申し訳ない。最後に1度だけ軽く背中を撫でると大人しく手を離し、その幸せそうに微睡む姿を写真へと残すことに勤しむことにした。
そして然り気無く。然り気なーく、そんな安積と同じように先程からカメラを構えている人が約1名。殆んど口を挟む事なく、猫を驚かせないよう慎重にスマホのカメラを向け続けているのは、意外にも鈴橋だった。
「意外。学も猫好きなのか」
「いや、多分あれは紗千に見せたら喜ぶかなーって顔だね」
「あぁーそう言えばシスコンだったなアイツ」
誤解の猫と泥棒猫に見守られながら
“ 猫 ” が猫の写真撮影をし
沢山の猫に囲まれるという状況に
班乃の顔に苦笑が浮かんだのはしょうがない事だろう。
「にしてもさ、どんな強力な媚薬使ったらこんなに集まるのよー?ハーレム状態じゃないww」
「ただのマタタビですよ。服についてたんでしょうね」
「なるほど媚薬っwwでもなんでマタタビが?」
「出掛け際に姉がマタタビの粉ぶちまけたんですよ。違う上着出す時間もなくて…叩いては来たんですけど、取りきれてなかったみたいで」
「自宅で…って!? えっ、もしかしてもしかしなくても、あっきーっ猫飼ってるの!?」
撮影に没頭しながらも他の会話は聞こえていたようで、目を輝かせた安積が班乃へと問うと、その声量に1匹の猫が草むらへと消えていった。
草むらへ向かい、ごめん猫ぉー(´Д`;)と手を伸ばし控えめに謝罪する安積に、頬を緩ませながらも班乃は先程の問いに答える。
「えぇ、2匹。飼ってます。僕がと言うより姉がですが」
「えー!?良いなぁ、猫の居る生活っ!どんな子!?」
「どんな子…白猫と黒猫の2匹で、2匹とも綺麗なオッドアイしてますよ」
「なにそれオシャンティー!!?」
「…それが死語って事は俺にも分かるぞ」
安積の要望で飼い猫の写真を見せながら、控えめに盛り上がっていたのだが、それでも鬱陶しかったのか、1匹、また1匹と猫がその場を離れていき、最後の1匹も挨拶をするように1つ鳴き声を残すと、颯爽とその場を離れていった。
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