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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む「ほら、がっくん! 仲直りの握手だよっ!」
「えっ? ぁっ、あぁ。そうか。悪い。仲直りな」
そう言って手を握り返すと、陰った顔に嬉しさを浮かばせた子供は、何度か手を上下にふるとパッと離した。
「俺、お兄ちゃん見たいな大人になるっ!」
清々しい笑顔と共にそんな言葉を残すと、踵を返し両親の元へと戻っていく姿をぼんやりと見送った。
「…別に、喧嘩してたわけじゃないんだが」
「まぁまぁw しかし海賊王になるっ!くらいの勢いだね! 可愛いーw」
「海賊王??」
「や、なんでもないよw」
両親の元へと戻り抱きつく様子に、あんなんでも彼にとっては大好きな親なのだという感情が読みとれ、少しばかり複雑な気持ちになる。
子供の為にも彼等にはもう少し、しっかりとした大人になって欲しいと願うばかりだが…
お母さん達はごめんなさいしないの?
そう問いかけた子供への返事は聞こえず、更に何も言ってこないと言うことは、そういう事なのだろう。願いは叶いそうもない。
『あの子が全うに育ってくれれば良いなぁ』
そんな事を思い浮かべながら浮御堂から去ろうとする親子を見送って居ると、隣に居た鈴橋が彼等を呼び止めた。
あからさまに嫌な顔をする両親に負けることなく側へとかけ寄ると、彼等の目の前で足を止め、そしてー
姿勢宜しく立ち、人目も憚らず頭を下げた。
そんな行動に周囲の人達の顔には驚きと “ まだ何かあるのか? ”という疑問や期待など、様々な色が浮かぶ。
「大切なお子さんを、危ない目にあわせてしまって申し訳ありませんでした」
「「…………」」
しかし鈴橋の謝罪に対し、両親はばつの悪い表情を浮かべただけで何を返すわけでもなく、子供の手を引きその場を離れていってしまった。
なにあれ、感じ悪い
あんな親で子供がかわいそー
そんなヒソヒソ声が聞こえてくる中、植野の元へと戻ってきた鈴橋はその場に座り込み膝に顔を埋めた。
『…これは、あれだな。1人反省会だw』
自信満々に堂々と物事を進めるわりに、その後にはこうして落ち込み反省会をする。そして立ち直りも早いが何気に引きずるのだ。
もはや恒例の姿は人の良さと微笑ましさも感じるけれど、折角初詣に来たというのに1人反省会をさせているのは可哀想だ。
「やー、本当に居るんだねぇ、あんなに堂々と逆コ◯ン君を全力疾走で体現したみたいな人w」
流れる気まずい空気を払拭させるため極めて明るく良い放つと、膝に顔を埋めたまま “ わりと居る ” と小さく返された。
『居るんかいっww』
両親が保育園を経営し、更に頻繁に手伝いをする環境上、鈴橋にとってそういった人達を見聞きする機会は植野よりも多く、わりと身近な存在なのかもしれない。
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