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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む「あぁ、失礼。そもそもあなた方には駄目な事をしたら謝罪するという概念が無いように見受けられるので、良いも悪いもないかったですね。可哀想に、この子が全うな大人になれない未来に待ったなしです。あなた方の意識が変わればこの子の成長に大きな飛躍が見られるでしょうけれど…
期待出来そうもないですし」
両者の間に沈黙が流れ、心配そうに一連を見守る傍観者達の間に小さな笑いが起きる。言葉を返すことも出来ず、子供相手に赤っ恥をかかされ顔を赤くした父親が大きく足を踏み出し、鈴橋に近寄ると片手を振りかざした。
相手はまともな大人ではない。こうなる可能性も予想していなかったわけではなく、反射的に鈴橋の前に出ようとする植野だったが…
「言葉が出なければ暴力ですかっ!」
淡々と喋り続けていた中で張り上げられた声に、驚いた様子でピクリと手が止まった。
どうやら鈴橋を庇う必要はなさそうだと安心しつつ身を引くと、呆れたような蔑むような軽蔑の目で彼を見据えた鈴橋が大きく溜め息をついた。
「本当、大人なのは体だけでなんすね。別に構いませんが、反動でこの子、落としてしまうかも知れませんよ。それくらい分かりませんか?あぁ、分からないですよね。すいません。大人なのは体だけですしね」
「っ!」
「色々思う事はありますが、目下、人に危害を加える事が駄目だと分かっているのに、そうしてしまった時には謝らなければならないという事すら、何故子供に教えて上げないのか、俺には理解しかねます。駄目だと言いながら、つい今しがた俺に危害を加えようとした貴方には荷が重いかもしれませんが、それでもきちんと教育しないのはネグレクトに該当しますよ。もしかしてご存知ないですか?」
もはや鈴橋の独壇場と化した浮御堂の上。
誰も口を挟む事も出来ず、再び沈黙し睨み合うだけの時間が流れ始める。
鈴橋の言っている言葉に間違いはない。
しかしド正論故に、理解できても受け入れられない事もあるだろうし、素直に謝罪出来るかどうかはまた別問題で…
『この人達は素直に認められないタイプっぽいよなぁ、どうみても』
公衆の面前で、自分よりもずっと年下の子供にド正論をぶつけられ、言いくるめられ、更には皮肉を言われ、公衆には笑われ、その上で謝れる素直な心を持っているような大人には残念ながら見えない。
それに子供好きな鈴橋が、今まさにその子供を危険な目に合わせる行動に出てしまっているのも少し心配だ。
『どうしたんだろ…普段なら絶対こんな事しないのに。大丈夫かな…』
そのらしからぬ行動は心配だし、彼らも謝罪はしなさそうだし、ずっと蚊帳の外になっては居るが自分だって当事者なのだし…
『どうにかして納めないと…』
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