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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む「さて、どこ行こう…」
植野等と分かれた後、班乃は浮御堂から見えないところまで電話をするフリをしつつ歩を進めた。は、良いけれど、特に目的地もない。
「あぁ、そう言えば…」
先程通った書道美術館の飛び石に分断されるようにある2つの池の他に、もう1つ池があったはずだと思いだしそちらへと足を向けた。
そこは鬱蒼とした緑に囲まれ、他の2つの池と比べると目立つ事なくひっそりと佇んでいる。そのせいか通る人々は目を向ける事なく通りすぎていく。
側にあるベンチへと腰掛け、体の中の空気全てをゆっくりと吐き出し空を見上げた。木々の隙間から見える空は良く晴れており、陽射しは木葉に遮られ優しい暖かさへと姿を変え降り注いでいる。
特段1人が好きというわけ訳ではないけれど、自然の中1人静かに過ごすというのはわりと好きだ。
場所ならではか、はたまた自然多いからか、目をつぶり視界を遮断すると、肌に触れる空気はとても清んでいるように感じる。
心の中に住み着くマイナスの感情全てが浄化されていくような気がして、その心地よさに自然と笑みが浮かぶ。
心地よい風が髪を揺らし、土と緑の匂いをお腹いっぱいに吸い込み、そしてー…
「…………え?」
お腹に暖かな何かが、わりと強めな何かの力が押し付けられ、擦るように離れていった。
「…………」
その力は向きを変え再び腹部へとすりより、離れたかと思うとまた戻ってくるを繰り返していく。
呆気にとられたままその行動を眺めていると、どこからともなく現れたそれとはまた違う何かが、ベンチへと華麗に乗っかり、腕へと体をこすりつけた。
『え……なに…?』
困惑していると、その2匹につられるように現れたもう1匹が、今度は足元にまとわりつく。
『これは…一体……どういう…』
唐突な来訪者達に困惑している班乃の事など気にもせず、通りすがる人々はなにやら微笑ましい笑みを浮かべながら去っていく。
何故どうしてこうなった??
戸惑いすり寄られるままに放置しているそれらを眺め、なぜを考えれば答えにはわりと直ぐにたどり着いた。
それは家を出る直前のちょっとしたアクシデント。
原因が分かってしまえば、今この現状は致し方ない事でしかなく…
『まぁ……別に…嫌いでは、ないですし』
彼らの力に耐えるのが地味に疲れるくらいだ。
手を伸ばせばお呼びじゃないとでも言いたげに避けられ、それでも誘惑には勝てないらしく側から離れない来訪者の奔放さは嫌いじゃない。
気が済むまでそっとしておこうと、静かに笑みを称えたため息をついた。
その頃植野はというとー
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