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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む目で見た訳ではないが、閉じた瞼の裏ではそんな風景が浮かびあがり、安定したリズムで鳴り響く音が優しく耳を包みこみ、自然と心に平穏が訪れる。
「まさかこんな所にあるなんて…これを知れただけでも来て良かった。ありがとう、安積」
「えっ?? あっ、いやいや全然!!ここ来たら絶対連れて来たいって思ってたし、こんな喜んで貰えるとも思ってなかったからっ、俺も嬉し!俺こそありがとうっ!」
「……あぁ、すいません。占領してしまって。会長達もどうぞ」
「いえいえ、全然構いませんよ? お気づかいありがとうございます」
順番に水琴窟を楽しむ面々を見つつも、安積は少し落ち着かない様子で後に組んだ手をそわそわと組み直していた。
隣には場所を譲った鈴橋が余韻を楽しむかのような笑みを湛えて佇んでいる。
『どーしたんだろ、今日のがっくん…めちゃちょーし狂うなぁ』
無表情か仏頂面がデフォ、他人との付き合いや人混みを極端に嫌い、誰かからの誘いに乗ることも少なく1人で行動する事が多い。更にアルミ缶を平気で投げつける様なタイプだったはずだ。
それなのに今日は、というか、最近どうも様子がおかしい気がする。
まだ実現は出来てはないがクレープの誘いに乗ったり、人混み上等な初詣に来てくれたり、最近は笑顔や今みたいに素直に感謝の言葉を口にすることも増えた気がする。
今日はそれがとても色濃く現れているような…
決して悪い事ではないのだけれど…
「がっくん」
「なに?」
「やっぱ最近良いことあった?」
「……なんでだよ。別に、なにもない」
そんな唐突な安積の問いに、鈴橋はハッとし表情を引き締める。実は以前、植野と付き合い始めた直後にも同じような事を言われたことがあった。
まさか浮かれているのが表に出ていたとは思っておらず、あの時改めて気を引き締めなおした。はず。これ以上勘づかれない様にとそれまで以上に慎重に気をつけ続けて居たはずで、再度聞かれる程変わったとは思えない。
「もしかして、綾となにかあった??」
「…植野?……なんでだよ」
「いや、がっくん誰かとつるむのあまり好きじゃないじゃん? でも、綾とは一緒に居るのが多かったし、最近は特にな気がしたから。あと他にも色々?」
「色々って…気のせいだろ」
「…そか、気のせいかぁ」
なにかあったのかというだけではなく、“植野と”という所まで勘づかれているとは…
『他人の変化に敏感なやつだとは思ってたけど…これは本当に気を付けないとまずいな』
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