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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む植野をいじって遊ぶ筈が、うっかり口を滑らせ矛先が自分に向いてしまいそうになった市ノ瀬は話をぶったぎり先を急かす。
ショックを僅かに浮かばせた班乃を横目に申し訳なさを感じなくはないが、付き合っているのだから遅かれ早かれそうなるわけで…
『安積だって何だかんだいつも乗り気だし、俺だけのせいじゃねぇ…』
実は一昨日から安積宅に泊まっており姫始も済ませている。流石に昨日はたくさん歩くだろうからとなにもしてないが…
『いや、なに言い訳してんだか。ってか誰も悪くねぇよな、これ』
恋人同士なのだから。
『まぁ、確かに…些か早かったとは思うけど…』
そんな事を考えつつ先を急ぐと、飛び石が連なる道の途中でしゃがみ込み水の流れを楽しんでいた安積達に追い付くのは直ぐだった。
全員揃って石で出来た道を渡り、書道美術館の前へ到着すると横一列に並び建物を見上げる。
「安積、書道に興味あったんですね。意外です」
「え、ないよ?」
「ないのかよw」
「なら、なんの為にここに?」
「目的地は書道美術館じゃなーあっ、猫っ!」
会話をしながら美術館前の階段を登り始めた丁度その時、視界の端で何かが通り過ぎたのを感じた安積は反射的にそれを目で追いかける。
するとそこではトラ柄の猫が看板横に飛び乗り、観察するような目を安積達一行に向けていた。その愛くるしさに思わず〝猫っ!〟叫ぶと間髪空けずに背後から叫び声が上がった。
「違うからっ!!」
「えっ? …猫、だよ? 猫だよ、ね?あっきー?」
「えぇ、紛うことなく野良猫ですね」
「………」
「どうした、植野」
「いや、なんでもない…です」
「猫だなぁw」
「猫ですねぇww」
「そうですねっ!!」
猫ではなく植野へと向け発言する班乃と市ノ瀬の様子に、なにかあったのかと安積と鈴橋は顔を見合わせ首をかしげた。
気になる所だが、会話を打ち切りたいと言わんばかりにスタスタと美術館に向けて歩き始める植野に聞くことは出来ず、その代わりではないが慌てて声を上げ足を止めさせる。
「綾っ!まってまって! そっちじゃない!」
「…違うの?」
階段を登りきり半分だけ振り返った植野の背後へと回り込んだ安積は、その体を美術館ではなく、美術館の左側へと押し向けた。
押されるがまま足を進めるその先には、鬱蒼と茂る木々に従業員用と思われる小さな入口、箒と学校でよく見る大きなオレンジ色のチリトリまで置いてある。
そこになにかがあるとは思えず、むしろ立ち入って良いところなのか不安さえ過ぎる場所だった。
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