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慰弦

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- 27章 -

- 謹賀新年-

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そんなの、自分だって知りたい…
突然の事で頭が回っていなかったが、そう言われれば確かにそうだ、と植野の頭の中で焦りが生じる。

旨く隠していたつもりだったし、恋愛ごとに疎そうな安積に感づかれる事はないだろうと踏んでいたのだけれど、もしかしてー…

『……ばれた??』

もしそうだとして、ここでなにか余計な事を言ったら芋づる式に市ノ瀬にも伝わってしまうかもしれない。

公表する事をまだ良しと思っていない鈴橋の為にもうまく会話を流さないと。言葉を探しているとすかさずスンとすました声が耳に届いた。


「一緒に行動してることが多いからじゃないですか?」

「あぁ、確かに」

「なるほどっ!」


焦る植野を尻目にさらりと答える班乃に、2人揃って納得の声を上げる。フォローともとれる班乃の言葉に感謝の意を込めて顔を向ける植野だが、盛大に面倒くさそうな表情を返され申し訳なさに小さく頭を下げた。


「…たまに、面倒になりますね」

「えっ、なっ、なにがっ!?」

「嘘に付き合わされるのが。誰がどうしたとか、誰と誰が付き合ってるとか、そういう感じの。隠すことないと思いますけどね」

「そっか、あっきーも大変だねっ!?」


『今その話題止めてっ!?』

折角旨く流せたのに、というか流してくれたのに、何故それを自身で無下にするような事を言うのか?


「…でもまぁ、そーゆーのは1人で決められるもんでもねぇし、一概に言える事じゃねぇだろ」

「っ!? そうそうっ! それにその人だって嘘つかせてごめんって、協力してくれてありがとうって思ってるよきっとっ!!」


『だから引き続き、お願いします明様っ!』

市ノ瀬の意外な援護射撃により、 “ そうてすか、そうですね。しょうがないですね ” と一人言の様に呟くと、 もうこの話題に用はないとでも表すように班乃は溜め息と共に人並みの向かう方向へと顔をそらした。

なんとか旨く乗り切れたようで安堵から思わず漏れそうになる溜め息は、植野へ向けられた市ノ瀬の鋭い視線により秒で引っ込んでいく。


「え、なに?」

「なにって…そうだったのかぁーって」

「え、なにが??」

「……」

「…むっ、むっちゃん?」


これはもしかして、もしかしなくとも…

『勘づかれたっ!?』

しかしそんな植野の焦りなど意も返さず、あまりにも普段通りすぎるせいで何を考えているのか分からない表情をした市ノ瀬は班乃と同じように前を見据えた。

「別に誰と付き合ってるかなんて、言いたくいなら言わなくても良い事だろ。…まぁ、なんとなくは分かったけど」

「はぁっ!? やっ、えっ、ってか何がっ!?」
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