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- 26章 -
- クリスマスおまけ② 植野&母 -
しおりを挟む「大したものかそうでないかを決めるのは私でしょっ? わざわざ綾ちゃんが作ってくれるなんて、こんな嬉しい事はないんだからっ!この子の事悪く言わないでよねっ!!」
「子って…」
少々むくれながらそう言い放ち背後にまわった母の手が背中に当てられ、押し出されるようにして共にコタツへと入り込んだ。
「ほらほら、おてて ぱっちん!!」
「いや言い方…子供じゃないんだから…」
「………いただきます出来ないの?」
「……はいはい」
「「いただきます」」
言われた通りに両手を持ち上げ、挨拶と共に手を合わせる2つの音を耳にしてからチキンを手に取った。
親からしたら子供はいつまでも子供と言うけれど、この扱いはそろそろやめて欲しい。
いつまでもあると思うな親と金と言うくせに、都合の良い話だ……
それよりもー
「……………………」
『黙っちゃった…味付け変だった?いや、でも味見した時美味しかったよね…うん、美味しいはず…美味しい…あれ、俺の味覚変??』
無言のまま食べ続ける様子に不安になる。教わった通りに作ったはずだし、頂いたチキンと同じような味に仕上がっている…と思うのだけれど…
「あの……」
「…………」
「もしかして、あんまり美味しくなかった…とか?」
「………綾ちゃん」
「……なに?」
両手に持っていたチキンを皿へともどし汚れた指先をティッシュで拭き取ると、なにやら神妙な面持ちで息子を見やる。
「これー」
「…うん?」
「すっごく」
「うん」
「すっごくっ」
「えっ……なに?」
「ーーーっ、美味しいっ!!綾ちゃん、これめちゃ美味しいよっ!」
「そっ、そっか、それはよかった…」
『溜めすぎだろ…!?』
無駄に不安にさせられるそんな溜めや、子供と言うより最早幼児扱いともとれる態度に悪態の1つもつきたくなるが…
プレゼント変わりに作った料理を満面の笑みで美味しそうに食べ進めるそんな姿を見せられてしまえば、そんな事よりも作って良かった、美味しく出来て良かった、…喜んでもらえて嬉しい。素直にそう思えるのだから不思議だ。
「まぁ、喜んでもらえて嬉しいよ」
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「これでもまだ言い足りないくらいだよっ!!本当にありがとうっ!!」
「別に…そんなお礼言われる程の事じゃないし」
「事だよっ!そうだっ!ケーキ買って来たから後で一緒に食べよ!ちゃんと綾ちゃんが好きなの買ってきたからっ!!」
「いいね、ケーキ最高」
「ねっ!」
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