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- 26章 -
- クリスマスおまけ② 植野&母 -
しおりを挟む「おけおけっ!一緒に食べ………ん?あれ、えっ?いま作ったって言った?」
気づかれませんようにと言う願いは虚しくも儚く秒で散っていった。
さすが接客のプロ。人の言葉を聞き逃さない…こんな所でまでそんな力を発揮しないで頂きたい。
「うん、まぁ……ほら、たまには良いかなって。たまたま、そうゆう気分だったから…」
「………」
『なんか言えって…』
フライパンに鎮座するローストチキンを眺め、目を何度もしばたかせて驚愕したような表情を浮かべた若子は、ゆるゆると息子へと視線を移しチキンを指差した。
「えっ……えっ!? やだ、手作りっ?!なにこれ凄い美味しそうっ!お店のやつみたい!これ作ったのっ? マジで?凄くないっ?綾ちゃん凄くない!?もーシェフレベルじゃないっ!!食べたい!食べていい? あっ、駄目まって!おこたの上片付けるからすぐだからっ!」
「い、いや…いいよ、やっとくから」
「だめだめっ!シェフはあの可愛いお皿出しといて!私は片して着替えてくるっ。本当、すぐだから!」
「う、 うん、わかった……」
なにか言えとは思ったけれど、あまりの騒がしさと勢いに少しドン引き呆気にとられながらバタバタとコタツを片し始める母の後ろ姿を目で追う。
『あっ、皿。皿出さないと。可愛い皿なんてあったっけ……』
ひとまずレンジへチキンを突っ込み、普段使わない食器類を入れてある戸棚を開けると可愛い皿(母いわく)を探し、可愛いは良く分からないが母が好きそうな皿を引っ張り出した。
「お待たせ綾ちゃん!!」
「おかえり。今ちょうど温まった所…なにその格好…」
チキンを乗せた皿を両手に持ち寝室から出てきた母に視線を向けると、普段のTシャツもしくはダボついた暖かパジャマに下には何も履かないと言う、鈴橋すらも困惑させるだらしな……ラフすぎる格好とは程遠い、シンプルさが逆にオシャレに見えるニットのセーターを身にまとい、仕事終わりを感じさせない程に身なりも整えられていた。
「なにって、正装?」
「……そんなオシャレしなくても。食って寝るだけなんだから」
「いーーや!せっかく綾ちゃんが作ってくれたんだもん!ちゃんと向き合わなきゃ!!この美味しそうなローストチキンにっ……!!」
「いや、わけ分からんから…そんな大したものじゃないし、大袈裟だって」
「なに言ってるのっ!!」
両手に持ったままだったチキンの皿の片方が母の両手によって受け取られる。暫し眺めた後、香りを楽しむかのように大きく息を吸い込み幸せそうな顔を浮かべた。
『こんな、チキン1個で…』
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