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- 26章 -
- クリスマスおまけ① 睦×聖 -
しおりを挟む意識は完全に市ノ瀬からそれており無意識に見つめ続けてしまっていた恥ずかしさに安積はパッと視線を前に移した。
「……あの、睦月?」
「なに?」
「手…」
「あぁ、危ないと思って」
知らず知らずの内に人目も憚らず腰に回されていた手に言及すると何もなかったかのように離れていく。端から見れば、腰に手を回されジッと見つめているなどという居た堪れなさすぎる姿になっていたと思うと羞恥心で顔が赤くなるのを感じるが…
少しだけ寂しい気持ちも沸き上がってしまうのがなんとも複雑な所だ。
帰宅後そんな気持ちも吹き飛ぶ程に2人きり盛大にクリスマスを祝い、幸せムードに包まれたリビングには2人の屍が転がっていた…。
「あー…幸せ…食い過ぎた…」
「……暫く節制しないとなぁ…太る」
「見てみて、めっちゃ食ったけどあんま腹出てないw 筋肉ついたかも!」
「……ほんとだ」
「ちょー、まってまってっ、くすぐったいww」
並んで寝っ転がりながらスッと服の中へと潜り込んだ手が優しく腹筋を撫でる。一瞬焦り茶化して返したのも束の間、予想に反しその手は動きを止めじわじわと伝わってくる体温が心地良い。
しばしその温もりを堪能していたのだが一向に動きを見せない手にどうしたのかとソロソロと市ノ瀬へと視線を移すと…
『…あれ、もしかして』
薄い目蓋が眼球を覆い隠し、綺麗な睫が行儀良くお辞儀をしていた。
「…睦月?」
「………」
「ぉーぃ?」
「ぁっ、ぁあ……一瞬落ちたわ」
自然と落ちた瞬の眠りから目覚めると、開眼1番、真隣に寝転び自分の名を呼ぶ恋人の姿が目に入る。
『…あぁ、良いな、こーいうの』
押し寄せる幸せに堪らず安積を抱き寄せギュッと力を込めた市ノ瀬は、再びその手から力を抜き肩におでこを預けると再び睫を落とした。
「眠い?」
「……お前と引っ付いてるとムラッとするんだけど」
「おい、選べ言葉」
「でもなんかホッとして眠くなる」
「……そ、そう?」
『どうしたっ!?珍しく甘えん坊だなっ!?』
向かい合うように体を横向きに起こし市ノ瀬の頭を抱き抱えると、相当眠いのか抵抗するでもなく大人しく収まり静かな呼吸を繰り返している。
「ねぇ、きょう、帰る?」
「……いや、明日帰る」
「そう、分かった。ちょっと待ってて」
すっぽりと腕の中に収まる頭を2度程撫で束の間の名残惜しさを振り切り立ち上がった安積は寝室へと向かい、敷き布団を両手に抱えると再びリビングへと戻った。
「ごめん睦月、ちょっと避けて」
「……え、なに?」
「今日はこのままごろ寝しよう!怠惰を貪ろうw」
「怠惰って…」
「脳が震えるーww」
「…黒い手に捕まるのは嫌だなぁ」
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