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- 26章 -
- クリスマスおまけ① 睦×聖 -
しおりを挟む「にらめっこしようっ!!」
「はぁ?」
「見てっ!私を見てっ!!」
「……お前はどこぞの鳩か。服は脱ぐなよ」
なに言ってんだコイツ…と言う目で見る市ノ瀬の視線を安積は精一杯に見つめ返した。不自然死極まりない提案なのは分かってはいたが、安積とてしたくてこんな提案したわけではない。
『気づきませんようにっ、気づかれませんようにっ!』
少しでも距離を取りたい。
見つめたまま止めることなく進める足は、焦る気持ちからか自然と早足になってしまう。
「いやいや、前見ろって。あぶねーだろ」
「お前が見ろっ!」
「…にらめっことは?」
買った全ての荷物をぶら下げた市ノ瀬は、何故か危険極まりない後ろ向き歩行をする安積に追い付くため呆れ半分といった表情を浮かべながら足を早めた。そんな市ノ瀬の斜め後ろへ然り気無く視線を移した安積は、先程まで自分達が居たケーキ屋へと入っていく“ 彼等 ” の姿を確認しホッと胸を撫で下ろす。
『危なっ!間一髪すぎっ!! 昨日と言い今日と言い…エンカウント率高過ぎじゃないっ?』
無視して避けてしまった事に罪悪感がないわけではないのだけれど、しょうがなかったとは言え昨日は市ノ瀬へ “ プレゼント ” をあげる事が出来なかった。今日こそは絶対に誰にも邪魔されるわけにはいかない。
邪魔という単語が自身の中に生まれてしまった事に苦虫を噛み潰したような感覚があるけれど、それでも嘘はつけなかった。
別に2人…植野と鈴橋だけなら空気を読んでくれるだろうしなんとでもなりそうだが、問題は妹の方だった。
話を聞く限り市ノ瀬の事をかなり気に入って居るらしいし、そのせいか市ノ瀬への鈴橋の当たりも柔らかい。植野はよく鈴橋宅に行くとの話しも聞くし、恐らくは彼等もクリスマスを祝うのだろう。
『もし、誘われたら…』
好きな人と一緒に居たいという素直で純真無垢なな幼い少女の誘いを断る等と言う可哀想な事は出来ない。
のだが…
『なんか、もやもやする…』
相手は子供なのに大人げなくモヤモヤを感じてしまう心の狭さに情けなくなると同時に、それを理由に断るなどという大人げないを上塗りするような事も出来ない。
それを回避するために思わず無視して逃げてしまったけれど…
『一瞬、綾と目があった気がする。気づかれてなきゃ良いけど…』
バッチリ気づかれ気づかわれて居たとは露知らず、そんな心配をしつつ無意識に隣に並ぶ市ノ瀬を眺める。
「で?」
「ん?」
「この一方通行のにらめっこはいつ終わる予定?」
「あっ、ごめん」
「別に良いけど」
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