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- 26章 -
- 冴ゆる星 -
しおりを挟む「…でも俺はがっくんと付き合った事もこれから一緒にやっていく事も、それが普通じゃない事だったとしたって後悔はしてないし巻き込まれたなんて思ってないよ。むしろ先に好きになったのは俺の方だし」
「…綾雪」
「楽だからってだけで人を好きになるわけじゃないでしょ?辛いからって簡単に嫌いになれるわけないじゃん。性別関係なくがっくんを好きになって、それで辛い事があってもなくても結果論でしかないし、もう好きになっちゃったんだもん。その気持ちは変えようがないし、好きな人と一緒に居る為なら辛くたってなんだって、どんな事だってしたいって思うよ」
「……そう」
「でも、良かった」
「………何が?」
「別れたいとかって話じゃなくて」
「そんなわけないだろ…」
「それに、俺も同じだから」
「同じ?」
不思議そうに向けられた視線に笑い返し、手袋をして来なかった事を後悔しつつ握ったままの鈴橋の手を自分の手もろとも前合わせからコートの中に誘う。
今はまだ学校という自由で不自由な狭い世界の中で運良く理解ある人達に囲まれているけれど、この先も運良くそんな環境で居られるとは限らない。辛く悲しい事だってたくさんあるかもしれない。
それだけじゃない。意味は違えど鈴橋と同じくらい鈴橋の家族だって大事で、大切な存在だ。
自分達の関係で鈴橋と家族の間に亀裂が入ってしまうかもしれないと考えたら怖くだってなる。
「自分の選択がこれから長く続くがっくんの人生を悪い方向に大きく変えちゃう可能性があるんだもん。俺も怖いよ」
「そんなのお前が気にする事じゃないだろ。俺が望んでお前と居るんだから」
「がっくんは気にしてくれるのに?俺だって気にするよ。やっぱり家族は大事だから」
「………」
「俺は誰に何を言われても良いよ。がっくんが居てくれれば大丈夫。でも自分の事でがっくんが家族と上手く行かなくなったらって思ったら、それは凄く怖いことだよ」
自分から発せられた家族という単語に鈴橋の顔が曇る。いつも気を使って優しく慎重に言葉を探してくれるのはとても嬉しいし、それを味わっていたい気もしなくはないのだけど、あまりの一生懸命さにいい加減申し訳なくなってきた。
「家族ってさ、色々な形があると思うんだよね」
「形?」
「そう。両親が居て子供が居る家族。母と子、父と子の家族、同性のパートナーとかね。俺の場合は、母親と母親の手助けしてくれた人、そのお店の人かな。どの形が正解だなんてないって思ってるし、勿論がっくんとも家族になれたら良いなって思ってる」
「…そう」
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