Pop Step

- 26章 -

- 冴ゆる星 -

まるで好きにならなければ良かったとでも言いたそうな言葉に心中が一気にざわつくのを感じる。


「普通に女の人と付き合う方がはるかに楽だろ」

「…付き合わなきゃ良かったって思ってるの？」

「…色々考えたり話したりしてると、俺の選択はお前に必要以上の苦労を強いる事になる事だったんだって思う時がある」

「………」

「もっと慎重になって、最初からハッキリとお前の気持ちを断ってればそんな事にはならなかったんじゃないかって」

「何言ってるのか、分からないんだけど？」


返事を待つために沢山の時間を費やして、自分に落胆したり悩んだり、辛く悲しい思いもなんとか乗り越えて、ようやく思いが通じ合ってー


「……ごめん」

「ごめんって、どういう意味？」


求めて求め合って、将来の話もして、これからって時に…どうしてこのタイミングで付き合わなければよかったなんて話をしだすのか…

『一緒に頑張って行こうって思ってくれたから、今色々と話をしてくれたんじゃなかったの？』

何を考えてるかさっぱり分からない。


「付き合ったこと後悔してるの？」

「………」

「なかった事にしたいの？」

「ちっ、ちがー」

「別れたい？」

「違うっ！ そうじゃないっ！そうじゃなくて…」


『あぁ、駄目だ』

こんなんじゃ駄目だ。
衝動的に矢継ぎ早に出る言葉が
キツくなる。冷たくなる。
もしかしたら悪い方向に話が進められて
しまうのではないかと気が気じゃない。
分かる。今ちょっと余裕なくしてる。

そういう時に余計な事を言うと、望んでない方向へ話が進んでしまうのはよくある話だ。

『がっくんが話すの得意じゃない事くらい分かってるじゃん。ちゃんと、落ち着いて、話、聞かないと…』

ざわつきを押さえるためなんとか深く深呼吸し、強く握られた手を膝の上へと誘導すると両手で包み込んだ。


「ごめん、意地悪な言い方して。大丈夫。ゆっくりで良いから…ちゃんと話して？」

「…話が大きくなってって、普通じゃない事にお前を巻き込んで行ってるって実感が増して…でも、好きだから」

「うん」


“ 好き ” の一言に、ざわつきが一気に引いて行くのを感じる。

鈴橋の言葉１つで目まぐるしく変わる心境の変化は、それだけ鈴橋を好きだという証拠なのだと思う。


「申し訳ないって思っても、別れるとかは考えられなくて…でも、やっぱり少し不安…というか、ちょっと、怖い。お前と、若子さんとの事も…」

「……そっか。ありがとう、真剣に考えてくれて。気持ち分かってあげられなくてごめん」

「……」