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- 26章 -
- 冴ゆる星 -
しおりを挟む予想外の反応にパッと顔を上げるとなんとも悪戯っぽく笑った鈴橋が“待て”させるようにスッと片手を上げ植野を制止した。
そしていつの間にかたどり着いていた複合遊具へとするすると登っていきザクザクと雪を踏む音が往復したかと思うと、置きっぱなしだった荷物を穴から差し出し続いて顔をのぞかせた。
「ほら、早く」
「あっ、うん」
荷物を受け取り降りてくる鈴橋に手を差し出すと特に拒否する事なくその手が握られ、ほっとしつつ屋根のあるベンチへと向かい始めた鈴橋を追いかける。
「あのさ、さっきは本当にごめん。疑うつもりじゃなかったんたけど…それでもそう思わせたなら俺が悪かったなって」
「いいよ別に。そこまで怒ってない」
『…少しは怒ってるって事ね』
「まぁ、俺も必要ないこと言って不安にさせて悪かったよ。言わなくても良いことだってあるしな」
「それは…そうかもだけど」
「ただお前を悲しませるような嘘はつかない。それは信じろ」
「……うん」
並んで腰を下ろすとなんとなく気まずい空気が流れ、幸せを感じていた時間との落差が余計にそれを色濃くさせる。
「……残念だな」
「えっ……なにが?」
「大人だったなら、もっと…ちゃんと一緒の時間、過ごせたのに」
「……ちゃんと」
落ち込み気まずいムードの中突如投げ落とされた言葉に遅れて理解が追い付くと同時に一気に顔に熱を帯びるのを感じる。
『おこっ、怒ってたんじゃないのっ!?』
切り替えが早すぎる…
当人にそんなつもりはないのだろうが、忙しくころころと変わる空気を追いかけるのも中々に大変だ。
「あっ、あのさっ!!」
「ん?」
なんとか置いてかれないように頭を切り替えて今まで聞くに聞けずに居た疑問を投げ掛けてみる。どんな返答が来るのかが怖いがそろそろそうも言ってられない。
「がっくんはさっ」
「あぁ」
「どこまでなら良いのっ!?」
「どこまで?…なにが?」
「なにが…って、その…さっきみたいな事」
「……あぁ」
両手でお茶を握り締め暖を取りつつ空を見上げた鈴橋は、暫しの思考の末迷いがあるように微かに眉を寄せゆっくりと口を開いた。
「どこまでだって良いよ。綾雪となら」
「どこまでだってって……」
「ただそれは、手に職つけて自立して、親の庇護下から出て、万が一の事があっても自分で責任とれるようになってから」
「………」
爆上がりしたテンションは秒で下がる。勿論、嬉しいことには違いないのだけれど…
その言葉の意味することはー
『進学って言ってたから…一般的な3年制だとして…すんなり就職出来たとして…後、4年、ちょい』
4年ちょい。
『………長い、な』
率直に言ってしまえば、そんなに待ちたくはない。と言うか、待てる気がしない。
が…
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