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- 26章 -
- 冴ゆる星 -
しおりを挟むでもこれが照れてるだけなのは百も承知だ。
相変わらず、照れる基準が面白い。
不意に見上げてきたその唇が短く頬に触れ、次いで間近で絡み合う視線に、自然と距離が近づー
いたのだが、なにか思い出した様にツイッと身が引かれた。
「がっくん?」
徐に先程手渡したお茶を開けると暑さに眉をしかめながら数口飲み、再び距離が詰められる。
「まったく…どこで覚えてくるのよ、そんな気遣い」
穏やかな温もりが短く落とされ背伸びした踵が地面につくと、一人言ともとれる植野の問いに首をかしげる。
少し時間が経っていたため “ まぁ、許容範囲か ” と思ったのだけれど、直前だったら抵抗感があるのは確かで…して貰っておいてだけれど…
相手のは良くても自分のは…と思う人の方が多いのではないだろうか。
向上力や勉強熱心な所に感心しつつも、一体どこで…と言うのが自然と口をついた。
「どこで……前に会長がー…ぁ」
「んっ!?」
「………いや、なんでもない」
「えっ、ちょっと待ってどーゆー事っ!?」
なんでどうしてそうなったっ??
『一体いつそんな話を明とっ!?』
そう言う事は2人でって話をしたはずなのに。
しまった…と言う吹き出しが見える(気がする)鈴橋の肩を掴むと、若干呆れたような目が向けられた。
「別に、会長と話した訳じゃない」
「じゃぁ、なんで明の名前が出てくるのっ!?」
「会長が他の奴と話してたのが聞こえただけだよ」
「そんな偶然あるっ!?」
「…心外だな。疑われるのは」
「っ、そう言うつもりじゃ……」
「論より証拠、百聞は一見に如かずって話ししたのはお前だろ」
「そう、だけど…」
「しないよ。お前が嫌だって言ったことは」
溜め息と共に先程まで情事を過ごした遊具へと足早に向かう鈴橋を慌てて追いかける。
疑うつもりはなかったのだけれど結果的にそう感じさせてしまったのは紛れもない事実だ。
「あのさ…」
「なに」
「嫌な気持ちにさせて、ごめん」
冷たい返事にしり込みしそうになるけれどなんとか謝罪の言葉を口にし、なんの反応もないまま歩き続ける後ろ姿を追いかけながら頭の中は反省で埋め尽くされる。
深く考える余裕もなく感情のまま言葉にしてしまったが為に傷つけたという事実が申し訳なくて、情けなくて。ゆっくりと手を伸ばしコートを摘まむと、体の向きを変えその手が振り払われた。
「触るな。今、わりと腹立ってる」
「うん…ごめん」
「だからー…」
「……」
「ちょっと」
「………」
「おあずけ」
「………へ?」
「なんてな」
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