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- 26章 -
※- 冴ゆる星 -※
しおりを挟む言葉の意味が理解できないのか、はたまたおおよそ植野の考えつかない何かを考えているのか。じっと見つめてくる鈴橋の視線が居たたまれない…
すると不意に伸ばされた鈴橋の手が植野の頭を捉え優しく撫でた。
『…こんな場面、どこかで見たことある様な…あぁ、そうだ。これは、あれだ…』
怪我をした子供を優しい笑顔と共にあやすあの時の仕草で、痛いの痛いの翔んでけーと言う声さえ聞こえてきそうだ…
『いや、痛いは痛いんだけど…そうじゃないと言うか、なんというか…』
しかし的はずれだとしても気づかう気持ちを嬉しいと思うのには違いはない。甘んじて受けているとー……
「っ!? がっくー」
「…………」
そうするのが当たり前のように下腹部に伸ばされた手が痛みを撫で上げ優しく擦り、唐突に降り注がれた刺激に思わず上げた驚きの声は重ねられた柔らかな唇により鈴橋の中へと吸い込まれていく。
痛みを和らげる為に患部をさすると言う行為は医学的に効果があると証明されているのは知っている。
知っているのだけど…
痛みを和らげる所か
この状態でのこれは最早逆効果でしかないー
窮屈に閉じ込められているその輪郭を確認するかのように添えられただけの指先が柔くなぞりふわりと包み込まれたかと思うと、キュッとしぼめられた手が上下し始める。
と同時に、追いかける様に押しつけ擦り上げながら手根部が通りすぎ、痺れるような刺激が全身を走った。
加えて喋らせないとでも言うように塞がれた唇と、口内を弄び続ける動きに自分すらも見失いそうになる。
『やば……気持ちいぃ……
じゃないっ!!』
渾身の力を込め鈴橋の手を掴み取り1度引き離すと直ぐ様胸元に抱え込み、身動き取らせないよう力一杯抱き締める。圧迫で小さく押し出された息に申し訳なさを感じるけれど今はそれどころではない。
「……ちょっと…これは、煽りすぎじゃないですかね」
「あぉ……そう、言うつもりじゃなかったんだけど」
『無自覚怖いっ…!!』
熱を逃がすように大きく呼吸を繰り返し、まだ手をつけていない宿題に明日こそは着手をと意識を反らしながら平静を取り戻そうと試みる。
「……ただ、痛いって言うから」
『…伝わってたんだ、痛いの意味』
それは鈴橋も同じような経験をした事があるからなのだろうか。知識だけ持っていると言う可能性もあるけれど、そうじゃなかったら…
たったそれだけの事を考えただけなのにゾクゾクと疼いてしまい意識的に頭から追い出した。
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