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- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟む「……寒っ!」
「凄い……」
「え、なにが?」
「眼鏡曇らない」
「早速使ったんだっw」
マフラーに顔を埋めた鈴橋は、曇り止めの威力を確かめるように何度か息を吐き満足げな表情を浮かべた。
悔しい気持ちはあれどこれだけ満足してくれるなら母も喜ぶだろうし、それを嬉しくも思う。
「ねぇ、ちょっと公園寄ってかない?」
「……あぁ」
鈴橋へのプレゼントもまだ渡せていないし、鈴橋からもまだ受け取っていない。2人の時間が欲しいと言ったのはきっとプレゼントを渡す為だったのだろう。
自宅に招く事も考えた植野だが参考書を買いに行くと言い出てきた手前あまり遅くなるわけにも行かず帰り道の公園へと誘う。
公園へ足を踏み入れると屋根があり濡れていないであろうベンチへ向かう鈴橋の手を取り引き留めた植野は、そのまま滑り台やトンネル等が一体となったお城をモチーフにした複合遊具へと足を進めた。
「え、なに?」
「登ろうよ、せっかくだし!」
「せっかくの意味が分からないんだが……」
「えっ、待って待って、穴狭いww」
「子供用だからなぁ……」
「…あっ、大丈夫、肩通ったからギリいける!!」
「そんな無理して登らなくても…」
丸く開けられた穴の中を通るようにかけられた梯子を登りながら騒ぐ植野に呆れながら鈴橋も後を追う。
つっかえてしまわないか少し不安に思いつつ穴へと頭を入れるが予想外にすんなりと通れてしまい若干の寂しさを感じつつ、大人しく植野を追いかけ頂上へと登ったその先には、意外と広い囲いのついた四畳ほどのスペースが広がっていた。
やはり滑ると危ないからか利用する子供は殆んど居なかった様で、足跡一つない綺麗な雪が積もっている。そんなことお構いなしに座り込んだ植野の隣に鈴橋も腰を下ろし、暫し無言で空を見上げた。
冬晴れの空に満天の星が輝き
澄んだ空気が気持ちが良い。
「星座ってさぁ…どこがどれだか分からないよねぇ」
「そうだな…俺も星座はあまり。オリオン座の腰と肩と足?辺りしか分からん…」
「えっ、どれどれ??」
「あれ」
「……えーと」
迷うことなく星を指し示す鈴橋の指になるべく身を寄せ視線を近づけるが中々見つけられない。
そうこうしていると更に視線を同じくする為か、無遠慮に近づいた鈴橋の側頭部がこめかみに触れた。頬と頬が触れあいそうな距離に微かに心拍数を上げながら、すっと伸びた指の先をたどっていく。
「あそこ、3つ並んでるのが腰辺りで、それを囲むようにある4つが肩と足あたり」
「みっつ……みぃー……あっ、あった!あれか!!」
「そう。で、4つの内の左上がべテルギウス」
「脳が震える人!?」
「それはペテルギウスな。そこから冬の大三角形になってて、子犬座とおおいぬ座の星に繋がってるはずなんだけど…それはちょっと分からないな…」
「俺からしたらそれだけ知ってれば十分だよ」
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