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- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟む「あっ…あまりの衝撃に忘れる所だったっ!」
「ぅん?」
「がっくんがプレゼント開けたら渡してって言われてたやつがあって」
「今度はなにかしらねっ」
「普通であって欲しいです…」
各々の期待と不安を受けながら開封された包み紙からは今度こそ普通の眼鏡拭きが登場した。
「良かった…普通だww」
「ちゃんと眼鏡グッズ一式用意してくれてたのねw」
「……いや、普通じゃない」
ポツリとそう鈴橋は、一見普通に見える眼鏡拭きを若干震える手で持ち植野を見やった。戸惑いつつもそんな態度の鈴橋と手に持たれた眼鏡拭きを交互に見るが、どう見ても普通の眼鏡拭きで、普通じゃないの意味が分からない。
「えっと、なんで?」
「これ、3COINSの…人気で売り切れ続出で、中々手に入らないって言われてたけど、最近になって漸く再入荷され始めたやつだ」
「そうなのっ!?」
「凄いな…」
「……凄いね」
眼鏡使用者でもなく、伊達でも着けている所は見た事ない。私生活で触れる事のない物に対してここまで短期間で最新情報を仕入れ相手の心を掴むなんて……我が母ながら恐れ入る。
感心する反面、自分の力不足も浮き彫りになり少々複雑な気持ちがこんにちはした。
「これは拭くだけで曇らなくなるって話題のやつだから、話題通りだったらいちいち曇り止め塗る手間ないから楽だし、駄目でもさっきのもあるし、威力によっては寒さに合わせて使い分けも出来るし、痒いところに手が届く気づかい…さすがお前の母親だな」
「えっ、ありが、とう…」
自分なんてまだまだだと落ち込みかけたそんなタイミングで、まるで心を読んだ様な鈴橋の言葉に、落ちかけた心が急上昇していく。
『そうだよっ。人と比べて落ち込むだけなんて勿体ないっ!』
そんな暇があるならその時間で自身を磨いて行く方が有意義だ。決して教えを説いている訳ではない鈴橋の何気ない言葉で上を向こうと思えたのは何度目だろうか。鈴橋の為ならばと、何度だって上を向いていけるのだから彼の存在の大きさは計りきれない。
自分が母に対して感じた事を
鈴橋が自分に感じてくれてるのなら
目下母を目標に
そしていつかは追い抜く!
全てに置いては無理だとしても、鈴橋に関する事だけは絶対誰にも負けないように!
1人決意を固め、誰1人そんなこと知るよしもなく、和やかにパーティーは進んでいった。
賑やかに騒ぎ、笑い、ケーキに舌鼓し、笑顔に溢れるパーティーも船を漕ぎ始めた紗千により終わりを告げる。時刻は19時を指す頃、鈴橋の進めによりお酒の入った両親に見送られつつ靴を履く。
ローストチキンの材料を片手に、参考書が欲しいからという口からでまかせをサラリと口にした鈴橋と共に雪の積もる夜道へと足を踏み出した。
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