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- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟む曖昧に笑って不思議そうな顔をする鈴橋を誤魔化し台所に向かうと、良い匂いを立ち上げながら何かが蒸されてるフライパンと、マッシュドポテトにグリンピースや人参などで飾付けしたツリーが量産されている所だった。
「可愛いですねツリー!」
「あら、ありがとう^^」
「それに、すごく良い匂い…なんですかこれ?」
「これ? ローストチキンよ!」
「ローストチキン…」
ローストチキンと言えば、可愛い印刷のされたアルミホイル等で持ち手部分をくるんでリボンで止めてあったりするクリスマスの定番料理だ。
昔は母が時々買ってきたりすることもあったし、長谷川がクリスマスに作ってくれたこともあった。
自分は勿論、母も嫌いではないはずでー
『これなら…』
「もしかして苦手だったかしら?」
「あっ、いえっ!全っ然大好きです!!」
「そう? 良かった^^」
急に黙り込んでしまって心配かけさせてしまった。誤解を解くために両手を全力で振り好きだと伝えると、ホッとしたように笑い再びツリーを作る手を動かし始めた。
「あの、おばさん……」
「ん? どうしたの?」
鈴橋へと一度視線を向けこちらに気を向けてない事を確認すると鈴橋母へと向き直り、声を落として口を開いた。
「これ、作るのって簡単ですか?」
「え? えぇ、難しくはないわよ?どうして?」
「良かったら作り方…教えて貰えないかと思って」
「作り方? それは勿論良いけどー…」
突然のお願いに目を丸くして植野を見つめていたのだが、鈴橋に聞かれないようにしている植野の様子から何かに勘づいたらしく、それはすぐに穏やかなものに変わる。
なにも言わずとも伝わってしまった自身の思惑に気恥ずかしさが押し寄せるが、なんとか笑顔で押し留めやり過ごす。
クリスマスといえどプレゼントを送るのはやはり抵抗がある。それでもこれくらいなら自分でも出来そうな気がして…
こういう時位でしか改めて伝えるチャンスもないし、日頃の感謝も込めてクリスマスっぽい物の1つでも作ってみるのも良いかもしれないと鈴橋との買い物中唐突に思い立ったのだった。
恥ずかしさはかなりあったけれど、自分の事のように嬉しそうに笑う鈴橋母を見ると勇気を振り絞って聞いてみて良かったと思えた。
「それなら冷凍のだけれど、お肉余ってるから持っていって。帰りだと売り切れてるかもしれないし」
「いやでもっ……その、良いんですか?」
「勿論!」
「すいません、何から何まで。ありがとうございます」
「気にしないで。頑張ってね!」
「はいっ!」
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