Pop Step

慰弦

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- 26章 -

- Merry Christmas -

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などという堅苦しい事をわざと考えながら、爆発しそうな好きやうっかりするとひょっこりしそうな邪心を誤魔化していく。

触れた手へ返された反応といえば微かにピクリと動くに止まり、兄妹仲むつまじく袋詰めを終えると何を言うでもなく当たり前のように手を繋ぎ歩き始めた。

『良いなぁ、兄妹って』

歳が離れている事もあいまってか余計微笑ましく見える。お互いを見る目が “ 好き ”や“ 大切 ” と言う気持ちをありありと物語っていて自然と笑みが浮かんだ。

とはいえ別に兄妹が欲しいと言うわけではないし羨ましいわけでもない。血が繋がってなくても紗千の事は実の妹のよう可愛がっているし、紗千からも綾にぃと慕われている。気持ち的にはすでに兄妹のようなものだ。

『ま、こう言う時は実のお兄ちゃんには叶わないけどさ』

それでも兄妹ような関係であり、それが嬉しいと思う気持ちに間違いはない。

それと同時に、自分を見る鈴橋の目が妹に対する “ 好き ” と同じではなくて嬉しいとも思う 。


「綾にぃ!!」

「ん? どーしたの?」


兄と手を繋ぎ楽しそうにしていた紗千が突然振り返り、後ろを歩いていた植野へズイッと手を差し出した。腕にぶら下げた買い物袋が床と仲良しした事にはどうやら気がついていないらしい。


「綾にぃも手、繋ご!!」

「えっ!ありがとうっ!でもー」

「広がって歩いたら他の人の迷惑だから、我慢しな」

「……でも」


そんな諌めの言葉に差し出した手を寂しそうに見つめた紗千は、兄の手をパッと離し両手で買い物袋を抱き抱えると数歩前に走り出でる。

そして振り返り2人を見上げ、意を決したように口を開いた。


「じゃー、お兄ちゃん達が手繋いで良いよっ!そしたら寂しくないでしょっ!!」

「えっ!?」
「はぁ!?」


1人後ろで歩く植野が寂しそうに見えたのか、そう言い放つと母の待つ下の階へとずんずんと歩いていく。

予想もしていなかった紗千の言葉に2人して固まってしまったけれど、先に我を取り戻した鈴橋が慌てて妹を追いかけ植野も急ぎそれに続いた。


「俺そんなに寂しそうに見えたかなぁ?寧ろほんわかしてたんだけどw」

「ほんわかって…」

「ねぇ、がっくんっ!」

「なに?」

「手ぇ繋ぐっ!?」

「繋ぐか馬鹿」

「即答さみしっw」

「言ってろ」


追いかけながら手を差し出し提案したそれは、分かっては居たけれど予想通りバッサリと切り捨てられる。折角紗千が作ってくれたチャンスだったけれど、どうやらそれは活かせそうもなさそうだ。
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