873 / 1,142
- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟むなどという堅苦しい事をわざと考えながら、爆発しそうな好きやうっかりするとひょっこりしそうな邪心を誤魔化していく。
触れた手へ返された反応といえば微かにピクリと動くに止まり、兄妹仲むつまじく袋詰めを終えると何を言うでもなく当たり前のように手を繋ぎ歩き始めた。
『良いなぁ、兄妹って』
歳が離れている事もあいまってか余計微笑ましく見える。お互いを見る目が “ 好き ”や“ 大切 ” と言う気持ちをありありと物語っていて自然と笑みが浮かんだ。
とはいえ別に兄妹が欲しいと言うわけではないし羨ましいわけでもない。血が繋がってなくても紗千の事は実の妹のよう可愛がっているし、紗千からも綾にぃと慕われている。気持ち的にはすでに兄妹のようなものだ。
『ま、こう言う時は実のお兄ちゃんには叶わないけどさ』
それでも兄妹ような関係であり、それが嬉しいと思う気持ちに間違いはない。
それと同時に、自分を見る鈴橋の目が妹に対する “ 好き ” と同じではなくて嬉しいとも思う 。
「綾にぃ!!」
「ん? どーしたの?」
兄と手を繋ぎ楽しそうにしていた紗千が突然振り返り、後ろを歩いていた植野へズイッと手を差し出した。腕にぶら下げた買い物袋が床と仲良しした事にはどうやら気がついていないらしい。
「綾にぃも手、繋ご!!」
「えっ!ありがとうっ!でもー」
「広がって歩いたら他の人の迷惑だから、我慢しな」
「……でも」
そんな諌めの言葉に差し出した手を寂しそうに見つめた紗千は、兄の手をパッと離し両手で買い物袋を抱き抱えると数歩前に走り出でる。
そして振り返り2人を見上げ、意を決したように口を開いた。
「じゃー、お兄ちゃん達が手繋いで良いよっ!そしたら寂しくないでしょっ!!」
「えっ!?」
「はぁ!?」
1人後ろで歩く植野が寂しそうに見えたのか、そう言い放つと母の待つ下の階へとずんずんと歩いていく。
予想もしていなかった紗千の言葉に2人して固まってしまったけれど、先に我を取り戻した鈴橋が慌てて妹を追いかけ植野も急ぎそれに続いた。
「俺そんなに寂しそうに見えたかなぁ?寧ろほんわかしてたんだけどw」
「ほんわかって…」
「ねぇ、がっくんっ!」
「なに?」
「手ぇ繋ぐっ!?」
「繋ぐか馬鹿」
「即答さみしっw」
「言ってろ」
追いかけながら手を差し出し提案したそれは、分かっては居たけれど予想通りバッサリと切り捨てられる。折角紗千が作ってくれたチャンスだったけれど、どうやらそれは活かせそうもなさそうだ。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる