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- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟む「…お前とのクリスマスも家族とのクリスマスも大切にしたいって言った事。冷静になって考えたら、少し無理矢理だったなと思って」
『わが、まま…って、それ??』
鈴橋が自分の発言をわがままだと感じたのなら鈴橋にとってはそうなのだろうし、環境や状況、心情によってはそれをわがままだと思う人も居るだろう。
しかし鈴橋がその発言をわがままだと思ってしまうのは植野にとっては少し…いや、かなり悲しい事だった。
「あのさ、がっくん。それ、わがままじゃなくって“お願い”って思えないかな?」
「お願い?」
「そ。一緒に過ごしたいってがっくんに思ってもらえて俺はすっごく嬉しかったから。がっくんがわがまま言ったなぁって申し訳なく思ったり、遠慮したりするのは少し悲しいかなって」
「…お願い」
『本当にもう。苦手すぎるんだから、こう言うことw』
お願いと我が儘の違いについて考えているのだろう。“お願い”と呟いたのを最後に口を引き結び心ここにあらずと言った表情を浮かべている。
こう言うことは考えずに感じろ!という部類だと思う植野とは違い、道理を通して理解していくタイプの鈴橋にとって感じろと言うのは難しいのだろう。
そんな植野にとって言葉で説明するのは難しい所ではあるのだれど、今回の事はそんなに難しくないような気がした。
そう思えるのは鈴橋や鈴橋に近しいタイプである班乃と共に過ごして来たおかげかもしれない。
とは言え“言葉にする事”と“相手に伝わる言葉にする事”と言うのは全くの別問題なのだけれど。
「好きな子のわがままなら、大抵みんな我が儘じゃなくてお願いだって思うんじゃないかなぁ」
「……我が儘は我が儘だろ?」
「それはそうかもだけど、それが好きな子の望みなら出来る限り叶えてあげたいって思うじゃん。がっくんも紗千ちゃんの望みは叶えてあげたいって思うでしょ?」
「我が儘は怒る」
「うーん…お願いと取るかわがままと取るかは受け取り手次第で、好感度で変わるって事だったんだけど」
「好感度……」
『駄目だこれっ、これじゃ今度はなんで好感度で受け取り方が変わるのかに議題が変わるだけだっ!』
それ以外で、感情的じゃない理由を見つけないと多分納得させられなさそうだ。
「他には、そうだなぁー…思いやりがあるかどうかじゃないかなっ!困らせないように相手の都合とか諸々理性的に配慮した上での要望ならお願いなんじゃないかと!!」
「…じゃぁ、やっぱり我が儘だったな」
「なんでそうなるのっ!?」
「…困ってたし。お前」
「そ、れは…」
確かに、鈴橋家のクリスマスに誘われた時に全く困らなかったと言えば嘘になる。
嘘になるけど……
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