866 / 1,142
- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟む後回しにして上手く時間を作れなかったら身も蓋もないのだけど、ここで渡すって言うのもムードの欠片もあったもんじゃない。
『どうしよっかなぁ…』
「ここのうどんってさー」
「がっくんって食べ方綺麗だよね」
「は?」
それとなく鈴橋を眺めつつ渡すタイミングを考えていた筈が、背筋を伸ばし行儀良く食べ続けている姿に思わずそんな言葉が飛び出してしまった。
言葉を遮られた事か脈絡もなく飛び出した言葉に対してなのかは分からないが、少しばかりの不満げな色を含ませた懸念の目を向けられ申し訳なくなってしまう。
「ごめんごめんっ!あまりに綺麗だったからついw」
「…そうか?気にしたことなかったな」
「誇って言いと思う!w それで?うどんがどうかしたの?」
「あぁ。まぁ、全然対した話じゃないんだけど」
「そんな何でもない様な事が幸せだったと思うって思うと思うんだよ!」
「……ここのうどんさ」
『流されたっww』
1口お茶で喉を潤してから少量のうどんを持ち上げ汁につけると、正しくなんでもないように聞き流した鈴橋が繁々とそのうどんを眺めた。
「弾力も凄くて、味も美味しいんだけど…」
「うん」
「いつ飲み込んだら良いのか分からなくて」
「……うん?」
「提供早い所でって選んだのに咀嚼に時間かかって…本末転倒だったなって思って」
『…なにこの子っ!!』
しゃんと背筋を伸ばして対した雑談もせず、真剣な顔で良く噛み行儀正しく食べるその裏で…
“これいつ飲み込めば良いんだろう?”
なんて考えながらもぐもぐしてたなんて……
『可愛いでしょっ!? 尊いっ!!』
見ようによっては欠点とも言えるそんな不器用な所でさえ、新しい所を発見する度にどんどん自分を惹き寄せていってしまうのだからこれはもう彼の才能だ。
「…あぁ、もうこんな時間か。待たせて悪い。なるべく急いでかき込むからもう少し待っててくれ」
「そんな無理しなくてもw食べきれなさそうなら少し食べようか?」
「…いや。食べさし渡すのは申し訳ない、というか子供じゃないんだし、自分の頼んだ分は食べないと」
「本当にもー真面目なんだからっw気にしないで良いよそんなん。残しちゃうより良いでしょ?」
「それは、そうだけど………悪い」
チラリと時計を見ていくぶんか悩む素振りを見せた後、鈴橋から遠慮がちに寄せられた盆から自身の皿へと取り分ける。
責任を持って自分で食べきる事と食べ残してしまう事とを天秤にかけての決断だろう事がありありと見てとれるそんな様子に、どこまでも真面目だなと好感を持つと同じくして、なんとなく甘えてくれた気がして嬉しくもなる。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる