Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
862 / 1,142
- 26章 -

- Merry Christmas -

しおりを挟む


『いやいや、でももしかしたらその誰かはっ』


「どうかしたか?」

「あっ、ご、ごめんっ、なんでもないっ!!」


ついつい考え込み立ち止まると、少し前を歩いていた鈴橋が振り返り心配そうに植野を見つめた。

『やめだやめだ!こんな日にぐだぐだ変な事悩んでもやもやするなんて良くないっ!』

無理矢理頭を切り替え時計を見ると間もなく昼時だ。となればー

『買い物終わったらご飯食べ行こっ!!ごはんごはんっ!!がっくんとごはんっ!!』

鈴橋と2人きりというだけで曇った気持ちが晴れてしまう自分の単純さに少し笑えてくるけれど、なかなか2人きりの時間が取れない恋人との貴重な時間ともなれば誰だってそうなるだろう。


「ねぇがっくんっ!買い物終わったらご飯行こうよっ!良い時間だし!」

「もうそんな時間か。そうだな。丁度腹もすいたし」

「やったっ!!」


笑顔で隣に並び肩に触れると不安げに結ばれていた鈴橋の口角が優しげに上げられる。その笑みや身長差で伏せ目がちに見える目、その目を恥ずかしげに隠す緩やかに伸びた睫もすごくすごく綺麗だ。

『まぁ、どんながっくんだってそう見えるんだろうけど』

レジへと並び会計を済ませる鈴橋の隣で何を食べに行こうかと頭を働かせる。やはり和食だろうか?このデパートに来ることはあまりないのでどんな店があるか把握はしきれていない。

『マップを見て決めるか…』

もしくは店内をまわりつつ決めるのも良いかもしれない。なんかデートみたいで…

『って、デートってっ!!』

最早お昼ごはんデートで頭をいっぱいにしてる植野の事など気にも止めずに、会計をしつつ鈴橋が包装を申し出る。


「かしこまりました。包装紙はどちらに致しましょう?」

「こっちで」

「リボンはいかがいたしますか? 彼女様にでしたらこの辺りのお色などー」

「いえ、彼氏です」

「…………えっ」
「…………へっ!?」


サラリと言ったその言葉の強烈さと言ったら。

そのあまりのパワーワードに一直線にお昼ごはんに向かっていた植野の思考が一気に鈴橋へと引き戻された。

『なっ、なんて!?今何て言ったのっ!?』


「なにか?」

「あっ、いえっ、もっ、申し訳ございませんっ!ではそのっ、この辺りのお色などいかがでしょうか?」


『店員さんもキョドっちゃってんじゃんっ!!ってかなにその平常心っ!?』

戸惑う2人の視線などお構いなしに鈴橋は顎に手を当て差し出されたリボンのサンプルを眺めている。

何かを疑っているように植野と鈴橋をチラチラと見比べる店員の視線に鈴橋以外の気まずさがどんどんと上昇していく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...