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- 26章 -
- Merry Christmas -
しおりを挟む品物を手に取り真剣に眺めてはまた戻し、違うものを手に取りそしてまた戻す。そんな事を繰り返し悩み決めかねている姿はとても珍しい。
いつもはなにを買うか決めた上で買いに出かけさして悩む事なく決めてしまう。シンプルな持ち物が多かったので以前そういったのが好きなのかと聞いた事があったが別にそう訳でもなく、嫌いなものを省いていった消去法の結果なのだという。
そもそもデザインに関して興味が薄くあれこれ悩むくらいなら最初からシンプルなもので良いと思っているようで買い物に時間がかかっている所を見たことがない。なんとも無駄を嫌う鈴橋らしい。
そんな鈴橋がこんなに悩んでいるのだ。
これは自分の物ではなく
きっと他の誰かの為の物なのだろう。
『もしかして、もしかしてだけどー』
タイミング的にこれはー…と思わないわけではないが、変に期待してそれが外れていたらかなり恥ずかしくなんだか聞くに聞けない。
「あっ」
「…なに? 」
「あっ、いやいや、なんでもない!」
「そぅ」
本当に、本当に偶然だった。
誰への贈り物なのだろうか?と植野の頭が埋め尽くされている中鈴橋が手に取った“それ”はつい最近自分も手に取った事があるもので、班乃への贈り物だと安積が写真を見せてくれた時の事がデジャブのように思い出された。
なにかを誤魔化す植野へ不思議そうに眉を潜めた鈴橋だったが特に深掘りしてくる事はなく、手に乗せたそれに視線を戻すと2、3確かめるように優しく撫でつける。
「手触り良いな。これ。布地も暖かいし」
「……本当だっ!カラバリも多いしスタンダードな感じだから誰かと…その、偶然お揃いになっても気にならなさそうなのも良いね」
「…あぁ、確かに。誰かと被ると嫌だって奴も居るよな。そういう決め方もありか」
今一度数並ぶカラーバリエーションを端から眺めた鈴橋はその中から1つ手に取ると、迷うことなくレジへと直行していく。
「あっ、ちょっと待ってがっくんっ!?」
「なに?」
「えっと…それって、自分用?」
「いや?」
「そ、っか」
「…これじゃ、なにかまずいだろうか?」
「いやいやっ、全っ然良いと思うよっ!一生懸命選んだんだしきっと喜んでくれるって!」
「そう、だと良いけど」
鈴橋が贈り物をするという事、ここまで真剣に悩んでいたと言う事は、相手はそれなりに親密な人と言うことで……
鈴橋がこれにすると決めたのなら口出しする権利はないし、懸命に選んで居たのを目の前で見てしまうと余計にだ。
でも、それだと鈴橋とその誰かがー…
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