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- 26章 -
ー 聖誕祭 ー
しおりを挟む「安積」
「…なに?」
「大丈夫か?」
「ん? なにが?」
「体。無理させたんじゃないか ?悪かったな」
「…あっ、あぁ、ぃや、全っ然。謝んないでよ。無理なんてしてないし、本当に」
その言葉は嘘でもなんでもない。
本当に、無理はまったくしてなかった。
無理してないか、痛くはないか、大丈夫かと何度も何度も気遣いかけてくれるその言葉達にその都度大丈夫だと返していたのは自分で、そしてそれは勿論無理して言った言葉ではない。
羞恥心はいつの間にか消え失せ感情のままに快楽を求めた。気がつけばただただ市ノ瀬を喜ばせたいという気持ちだけが頭を支配し体を突き動かしていて…
だから市ノ瀬が謝ることなど何もない。
体に残る痛みはある意味市ノ瀬を満足させられた勲章だとも言える。
ただー
「ただ…」
「ん?」
「ちょっと…直ぐには、動けない、かも…」
片足を下ろそうとしただけで走った痛みを考えると直ぐに歩く事は難しそうだ。でも今日は楽しみにしていたクリパの準備がある。
『午後にはどうにか動けるようになればいいけど…
いや意地でも動くっ!!』
「そんなに辛いのか……悪かった」
「だから謝んなって!大丈夫だからっ!」
そんなに謝られると逆に申し訳ない上に、自分達の行為を再確認させられている様で朝だと言うのに沸々と熱が上がってきてしまう。
「そんなに痛かったなら言えよ」
「だから痛かったわけじゃないってっ!むしろっー…」
「………」
「ゃ、なんでもなぃ」
そう。痛かったわけじゃない。
痛みを感じたのは “朝から ” で
昨晩に至っては痛みとは全く逆だったわけで…
なにか安心してもらえるような言葉はないだろうか。そんなことを考えていると優しく背中を上下していた手が、上がらずそのまま腰へと降りていく。
それはきっと痛みを和らげる為のただのタッチングで他意はない。
しかしー
「……っ!」
突然の動きに息を飲むがそんな事お構いなしに優しく宛がわれた手が労る様に腰をさすり始めた。時折揉みほぐす様に押し込まれる指先が気持ちいい。
しかしその気持ち良さの中にまた別の気持ち良さが微かながらに顔をだし疼きそうになるのをぐっと堪える。
『これは…別にそんなんじゃないしっ、朝だしっ、これだって他意ないしっっ』
そんな言い訳で無理やり自分を納得させ、自身の変化がバレないようにと然り気無く手で隠すとタッチングによる本来の気持ち良さに意識を集中させする。
ストレッチはするけれどマッサージなんてそうそうされるものではない。マッサージってこんな気持ちの良いものだったっけ?と静かに息を抜き目を閉じた。
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