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- 26章 -
- 幸せの貌 -
しおりを挟むそして密着する体から伝わる鼓動に、果たして自分と安積のそれはどちらが早く時を刻んで居るのだろうかとぼんやりと考える。
一生に刻む鼓動の回数はおおよそ決まっているというし、どうか彼の方が遅いと良い。
健康に健やかに長生きして欲しい。
どうか…自分を置いて先に逝かないで欲しい。
そんな事はまだまだ先の事なのだけれど、何故だか不意に頭をよぎったそんな考えに底知れぬ恐怖が襲い抱き締める腕に自然と力が入る。
それに応えるように回された腕がぎっゅと市ノ瀬を捕らえ、隣り合った側頭部へと優しく頬が寄せられた。
「睦月、どうかした?」
「……安積」
「ぅん?」
「好きだよ」
「…うん」
「好き」
「…なんかあった?」
「別に、まんまの意味だよ」
「そう?」
『本当、こう言う所だけは直ぐ感じ取るのな』
その敏感さをもっと別の所で発揮してくれよと思いつつ、察せられた気恥ずかしさで悪態をつくと同時に心配をかけさせてしまった事に申し訳なさも感じる。
ずっとずっと先のもしもの事を考えるなんて無駄なことだ。そのせいで今この時の幸せに影を落とすなんてもったいない。
猫吸いよろしく安積の髪へ顔を埋めて大きく深呼吸をすると、その効果は抜群で気持ちは大分落ち着いた。
そっと体を離すとおでこ、唇へと口づけを落とし目を合わせ笑い合う。
「睦月」
「ん?」
「俺も。大好き」
「…さんきゅ」
再び触れるだけの口づけを交わすと愛しい人の存在を確かめるように首筋から胸元、下腹部へと手を滑らせ、優しく “ 彼 ” を包み込んだ。
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