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- 26章 -
- 幸せの貌 -
しおりを挟む「あっ、あのさっ、そのっ…まだ心の準備と言うものが…」
「出来てないの?」
「出来て…ない、というか、なんというか…」
「どこまでなら出来てんの?」
「どこまでって………どこ、って…」
「じゃぁ、こーしよう」
乗っかったまま人差し指を立て提案を口につつ然り気無く体制を変えると、偶然を装いソレに足を擦らせた。その途端主張を増させビクつく体と息を飲む音に心臓がはね上がる。
困り焦ったように視線を世話しなく動かしながら口元を押さえ、これ以上の刺激を避ける為か股座に入り込んだ市ノ瀬の足を固定するように挟んだ安積の両足に力が入る。
それでも強く拒絶しないその意味は??
『まったく…ヤバいのはこっちの方だっつの…』
意識的に極めて冷静さを張り付けたまま、安心させる為僅かな月明かりでも明るく輝く髪を撫で付ける。たったそれだけで柔らぐ表情が愛おしくて堪らない。
「言っとくけど、お前を怖がらせたい訳でも困らせたい訳でもねぇから」
「……うん」
「だからお前がしんどいとか、辛いとか、怖いとか、無理だって思ったら言ってくれ」
「で、でも…」
「心配すんなって。俺が何度お預け喰らってたと思ってんだよ」
「信用してないとか…そーいうんじゃないんだけど…なんか、ごめん」
「別に良いって。でも」
「……でも、なに?」
本当を言えばお預けなんて喰らいたくはない。思うがままに心行くまでめちゃくちゃにしてやりたい。自分の手で馬鹿みたく乱れていく姿を見てみたい。
一切の我慢なんてせずに何もかも投げ捨て溺れ溺れさせたい。
でもそれで信用をなくしては本末転倒、元も子もない話だ。
『だから、頑張れ、俺……』
「恥ずかしいからって理由はなしで」
「えっ?……えぇー……?」
本音を隠し発した市ノ瀬の言葉に不満の声を上げた安積だったが、その顔には困惑以上に期待の色が見えた気がした。
少し乱暴な思考も嘘ではないけれど、優しくしたい、大事にしたいと思う気持ちだって嘘ではない。
苦しくならないよう体を少し浮かせながら自身の下で寝転がる安積へ両腕を回し強く抱き締めた。
そして密着する体から伝わる鼓動に、果たして自分と安積のそれはどちらが早く時を刻んで居るのだろうかとぼんやりと考える。
一生に刻む鼓動の回数はおおよそ決まっているというし、どうか彼の方が遅いと良い。
健康に健やかに長生きして欲しい。
どうか…自分を置いて先に逝かないで欲しい。
そんな事はまだまだ先の事なのだけれど、何故だか不意に頭をよぎったそんな考えに底知れぬ恐怖が襲い抱き締める腕に自然と力が入る。
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