846 / 1,107
- 26章 -
- 幸せの貌 -
しおりを挟む『あー…やべぇなコレ。理性保つかな…』
いや、保たないと。
そんな自粛の念を固めながら固く引き結ばれた唇に音も立てず触れるだけの短いキスを落とす。
「…………」
「んな緊張すんなよ」
「…そんこと、いわれても」
「大丈夫だって。力抜いてリラックスしろー」
「難しいコト言うなよっ」
むくれる安積の頬をほぐすように両手でつまむと怒ったような表情を浮かべるが、それでも振りほどこうとはせずじっと恨めしげに市ノ瀬を見上げる。
『そんな目で見られたって怖くもなんともねぇし、むしろー』
むしろ、可愛い。
「それにほら」
「…なに?」
「そっちのが気持ち良いから」
「………きっ!?」
「ほら、頑張れー。リラックスリラックスー」
「…頑張ってリラックスするとか…なんか矛盾しか感じねぇーんだけど」
文句を言いつつもなんだかんだ頑張ろうとはしてくれるようで、下を向き大きく深呼吸を繰り返している。その姿はー
『前向き、努力家、素直、柔順……わんこ?』
なんと表せば良いのだろうか?
どれもピッタリ過ぎて選ぶ事なんて出来ず、なんだか見ていて微笑ましくなる。
「よしっ!こいっ!!」
「さっきよか力んでんじゃねぇーかよww」
(キリッと睨み自分を迎え入れようとする姿に
“こんなラインスタンプあったなぁー”
と場違いな感想が浮かび笑えてくる。
しかし頑張ろうとしてくれているのだから無下にするわけには行かない。
敢えてなにもせず黙ったまま見つめ続けると安積の顔に疑問の色が浮かぶ。微かに首をかしげる仕草が受け入れる姿勢のように見えて流行る気持ちを押し込めると、目論み通り力が抜けた安積に再び口づけを落とす。
即座にきゅっと入った力を抜かせるように背中をトントンと叩き徐々に柔らかくなっていく唇に続けて数回口づけると顔を離した。
耳まで赤くし間近で絡み合った視線を即座に反らした安積はなにかを考える様に口元を押さえ、暫しの後おずおずと市ノ瀬へと視線を戻す。
「…ほんとだ」
「なにが?」
「こっちのが、気持ちぃーや」
「そりゃ……良かった」
『可愛いかよっ』
眉を下げ“にかっ”と笑い放たれた言葉に落ち着け落ち着けと心の中で唱える。
『冷静にっ、冷静にならないとっ。暴走してアイツの二の舞になるのはごめんだ』
そんな市ノ瀬の心中など知るよしもなく黙り込んだその口元に安積の指が触れた。
照れたようにおずおずと見上げる安積の上目遣いに落ち着く所かどんどんと落ち着きがなくなって行くのを感じながらも今まで培った経験でなんとか平然を装う。
「……なに?」
「……たぃ」
「ん?」
「もっと…したい、かも。…駄目?」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる