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- 26章 -
- 幸せの貌 -
しおりを挟むその先を求めてしまうのは普通なんじゃないか?
しかし電車の中同様至っていつも通りにTVを眺める市ノ瀬を横で感じていると自分がおかしいのではないのかという気がして、自分1人で馬鹿みたく舞い上がって急ぎすぎているのではないかという気がして、自分自身のそんな思いを恥ずかしく思ってしまう。
自分自身だってやはりそれなりに心の準備をする時間が欲しいのは確かだし、それに対して “ 具体的に何をどれくらい ?” と言われても正直答えられないのだけれど。
でも
触れたい、甘えたい、彼の温もりを感じたい。
もっともっと近づきたい。
ただ、そんな思いが押さえられない。
今までは出来なかったけれど
……いや、自粛していたけれど
今はもう、我慢する必要もない訳で。
『少しだけ…少しだけなら、良い、かな?』
視線はTVに向けたまま、市ノ瀬の肩へと寄りかかった。服を通してじわりと伝わる熱が心地よい。
『なんだっけ、こう言うの…幸せホルモン? えーっと、せ、せー……あ、セロトニンか。めっちゃ活発化してる気がするw』
即時に訪れる安心感や幸福感は、特に何を言うわけでもなく当たり前のように首の後ろを周り優しく頭に乗せられる手により増幅されていく。
『あー…落ち着く』
そっと目を閉じてその幸せを噛み締める。
市ノ瀬により乱された心が市ノ瀬により整えられていくのはなんだか不思議なのだけれど、事実そうなのだからそういうモノだとしか言いようがない。
『…まったく、人の気も知らないで…コイツは』
突如寄りかかり幸せそうに薄く笑みを浮かべた安積のそんな行動に市ノ瀬は内心ため息をつく。
今までとは違いなんでもない様に振る舞う必要はないのだろうが自然とこうなってしまうのだからしかたがない。これまでの経験で体が覚えてしまった反応というのは恐ろしい。
しかしその心情はそんなに穏やかなものではない。
安積がその行動で求めて居るものはなんなのか?
自分の予想だけで行動を起こし、もしそれが間違って居たとしたならば取り返しがつかなくなりそうで…
逆に間違ってないのだとしたら、どこまでなら大丈夫なのだろうかとグルグルと考えてしまう。
傷つけたくはない。
あの時のような辛い体験を、今度は自分がさせてしまったらと思うと躊躇しかない。
求めれているとしたならば応えてあげられないのも申し訳ない…というか、このチャンスを逃したくない。
しかしただくっついて過ごすだけで満足と言う人も居るし、なんとなく安積はそんなタイプな気もする。
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