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慰弦

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- 26章 -

- 幸せの貌 -

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「ーー~さすが王様っ!!めっちゃ旨ぁぁー!」

「ほんと、幸せそうに食うよなぁ」

「旨いは正義っ!!」


自宅に着くと早速買ったケーキと紅茶を広げささやかなクリスマスを楽しむ。クリスマスだからと買ったケーキはもはや心境的にはお付き合い記念のお祝いに近い。


「あっ、懐かしくないこれ!」


特に意識して付けていたわけではないチャンネルで懐かしい映画が流れ始めた事に気がついた安積は思わず声を上げ指をさした。クリスマスを題材にしたものではないがクリスマスのイメージがあるのが不思議だ。


「これは…あれか?ギャングの愛人の歌手が逃げる為にシスター達に紛れ込んで子供達に歌教えるっつーやつだっけ?」

「それ2な!ちょっと1と混ざってるけどw」

「だっけか?」

「1はギャングから逃げた先の教会でド下手な聖歌隊鍛えて、聖歌をゴスペルチックにアレンジしたりして猛反発受けながらも大成功するやつ!」

「あぁ、そっちか」


市ノ瀬へと目をやりケーキを食べ終わっていることを確認すると、映画館気分を味わうために電気を消しテレビへと視線を向けた。


「クリスマス映画と言えば?」

「クリスマス映画? …そうだな。泥棒と留守番中の子供がドンパチするやつ」

「ド定番のやつ!」

「後は…これ」

「これ?」


そう言って徐に手をすっと持ち上げた市ノ瀬はテーブルに2本の指を立たせると、トトトっと動かし走らせる。


『あぁ、綺麗なhand…じゃなくてっ!!』


「あれかっ!妖怪一家のホラーコメディ!」

「そうそう。後は…なんだろうなぁ」

「あれは!? 両手が、ハサっ…ハサミっ、の……っ」

「言い終わる前になに泣きそうになってんだよ」

「だってあれ切なすぎるっ…!!人としての幸せ手に入れて色んな人に受け入れられて、好きな人も出来て好きにもなってもらえて、それなのに結局裏切られてっ、あんなオチっ…報われなさすぎて辛いっ!!」

「まぁ、分からなくもないけど」

「ってかクリスマスのラブロマンスものって異様に悲しいの多くて切ないっ!なんでなんだろ?」

「さぁ?」


悲しい気分になる。
安心感が欲しくなる。
人に触れたくなる。

そんなカタルシス効果がなんだかんだ恋人同士には都合が良い状況を作り出してくれると言うのは知るところではなく、その会話はただそれだけで終わった。
更には2人が見ているのはラブロマンスとは全く関係ないコメディ映画なのでそれを知っていた所で、である。

特別見たい!という映画ではなかったけれど、見始めるとついつい夢中になってしまうというのは、きっと誰にとってもあるあるな話だろう。

例に漏れず2人も揃って夢中になり、途中から会話すらもせずに見ていた映画もエンディングを向かえ、前のめりになっていた体をソファーの背凭れに投げだし充実した溜め息をもらした。
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