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- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟む並んで電車へと乗り込むと運良く空いていた座席に並んで座り、深く腰を下ろし疲労感を色濃く浮かばせた安積の横顔を見下ろす。
『ま、無理もねぇか』
終業式の後、殆んど寝ずに班乃の誕生日の準備をし続けての今日だ。精神的な疲れは大きいだろう。
班乃自身誕生日を祝う気分ではない事や、その理由を知っているからこそ安積もかなり頭を悩ませた筈だ。
こうなる事が分かっていたから班乃も誕生日を公言したくなさそうにしていたのだろう。
少し前、雪に対し班乃も安積のような悲しい出来事があったのかもしれないと思った事は気のせいだったと結論に至った思慮の浅さが、弱いところを見せたくないだろう性格なのは分かっているのに気づくことが出来なかった自身の無神経さが妬ましい。
事情は知らなくても、もう少しなにか出来ることがあったのではと思ってしまう。
「…なぁ」
「ん?」
「明があまり隠してる感じじゃなかったから聞くけど」
「うん」
「なんでお前は明があそこに居るって思ったんだ?…命日は明日なんだろ?」
「……あぁ、うん。そぉ、なんだけど」
しばし考えるような素振りを見せた後、ぽそぽそと口を開いた。
「確かに命日は明日なんだけど、事故にあったのはイブなの。一昨年の、イブ。一緒に出掛ける約束してて…待ち合わせ場所に先に居た明の目の前で事故に遭っちゃって」
「一昨年…? 目の前…って」
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相手はトラックだ。
悲惨な事故だっただろう事は明白で…
もし、自分だったら。
もし、安積が自分の目の前でそうなってしまったら…
考えただけでも、心臓が締め付けられるかのように痛い。
いつだったか指輪について尋ねた時“渡せないまま未練たらしくまだ持っていたしょうもない話”と言っていたけれど、そんな事はない。全くない。
そんなの当たり前だ。
しかも一昨年なんて…
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「辛いよね…。だから、明にとってはクリスマスイブもクリスマスも良いものじゃなくて…」
「誕生日だって祝う気分にはならねぇな」
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「だから昨日の事はかなり悩んだんだよね。嬉しそうにはしてくれてたけど明が居なくなったって聞いて、間違いだったんじゃないかって、もしもの事があったらって心配になって。祝う事で彼女に引け目を感じてたとしたら余計なことしたんじゃないかって」
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