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- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟む安積が静かに目を開いたタイミングを見計らい声をかける。居ると思えば居ないものを見てしまう事だってあるし、非現実的だと思う。自分の勘違いだって事も大いにあり得る。
だけど、安積が言うのなら。
あの月影の弟である安積がそう感じるなら。
本当にここに居てくれたのかもしれない。
「僕も、そんな気がしたんです」
「ぅん?」
「楓が側に居てくれた、そんな感じが」
「そっか…そうだと良いねっ!」
「えぇ」
けれど同じ事はもうないだろう。
漠然とだけれど確信を持ってそう言える。
悲しいけれど、これで良かった。
「ところで」
「なに?」
「連絡したのか?」
「連絡??」
「……明のお姉さんに」
「…………あっ!?」
「早く連絡いれた方が良いんじゃないか?すっごい心配してたし」
『連絡先交換した意味…』
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「大丈夫ですよ。僕が連絡入れー…ようと思ったんですが…すいません、充電が…」
「そーなるよねw 大丈夫、俺から入れておくよ。ちゃんと “めっ” して反省してましたってw」
「…すいませんっ、 よろしくお願いします」
「あと充電切れてるのも伝えとくね!」
「ありがとうございます」
『めって…』
『めって、かわいいかよ…』
瞬間市ノ瀬と目が合いなんとなく察し合ってしまったお互いの心の内に、若干の気まずさを感じ目を反らした。
反らした視線の先には燃え尽きるにはまだまだ時間のかかりそうな線香が2本、優しく煙を上げている。
「…帰る前に、雪だるまでも作ろうかな」
「は? 急にどうしたよ?」
「雪だるま?」
「昔、楓が楽しそうに作ってたの思い出して」
「良いねそれ!皆で作って3つ並べたら可愛いんじゃない!?小さいの! 邪魔にならない程度にさ!」
「なんで当たり前に皆で作る前提なんだよ」
「え…嫌?」
「……いや、作るけど」
「やった!」
嬉々として作り始める安積に続き2人も近くにあった雪を集め、3つの雪だるまが完成するまでにはそんなに時間はかからなかった。
もしここに楓がいたらどんな感じだったのだろうか。安積と楓はとても気が合いそうだし、きっと良い友達になれただろう。
そんな想像に自然と笑みがこぼれた。
完成した雪だるまを眺め暫く当り障りの無い談笑を交わした後、燃え尽きたお線香の後始末を終え3人揃って帰路へとついた。
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