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- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟むだからもう、なにも心配する事はない。
『たくさんの幸せをありがとう。
好きになってくれてありがとう。
好って気持ちを教えてくれてありがとう。
数えきれないくらいの素敵な思い出をありがとう。
いつもいつも見守っててくれてありがとう。
たくさん心配かけてごめん。
大好きだよ。ずっと愛してる。
でももう、大丈夫。
大丈夫だから。だからー…』
その時ー
不意に背中に舞い降りた温もりに
目の奥がジンと熱くなる。
あり得ない事だとは分かって居るけれど
突如奪われた彼女の温もりを
再び感じる事が出来たような気がして
これが、最後の挨拶のような気がしてー…
最後に会いに来てくれたような気がして。
ぎゅっと目を閉じ流れ出しそうな涙を堪えると、背後を振り返る。
そして……
「…なんだよ?」
「いえ、貴方かぁー、と…」
「はぁ?」
なんとなくそこに安積が居てくれたらなんて思ったのだけれど、残念ながらそれは叶わず。
それはそうだ。安積は先程から変わらずずっと隣に寄り添ってくれている。
小さな溜め息と共に突然向けられた視線と残念そうな班乃の表情に訝しげな表情を浮かべる市ノ瀬と、そんな状況を隣から不思議そうに眺める安積2人に曖昧に笑って誤魔化した。
「ねぇ、あっきー。俺も手、合わせて良いかな?」
「え? えぇ、勿論。駄目なことなんてないですよ。でもどうして突然?」
「前はさ、何も知らなかったし会ったこともない始めましての俺が手を合わせるのってどうなんだろうって思って出来なかったんだけど…やっぱり親友の大切な人には挨拶したいなって。それに…」
「それに?」
「えっと……なに変な事言ってんだって思うかもだけど」
「ええ」
「居た気がしたの」
「はい?」
「楓さんが」
「………」
「なに言ってんのお前…」
「ですよねー…いい、いい、やっぱ今のなし…」
自分の発言を恥じるようにパッと視線を反らした安積はなにかを探す様にキョロキョロ辺りを見回した後、班乃へと申し訳なさそうな表情を向けた。
「ごめん。ちょっと気が回らなくて…お線香あったらもらっても良いかな?」
「えぇ、勿論」
「…俺も良いか?」
「はい。ありがとうございます」
「さんきゅー」
「楓さん、ちゃんと用意してこれなくてごめんなさい」
墓石に向かって謝罪を口にし線香を供えると目を閉じ手を合わせた安積達を横目に眺め、墓石へと視線を移す。
自分もと思ったのだが
いくら手を合わせたとしても
そこにはもう彼女は居ない気がしてー
「…安積」
「ぅん? なに?」
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