818 / 1,142
- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟むだからもう、なにも心配する事はない。
『たくさんの幸せをありがとう。
好きになってくれてありがとう。
好って気持ちを教えてくれてありがとう。
数えきれないくらいの素敵な思い出をありがとう。
いつもいつも見守っててくれてありがとう。
たくさん心配かけてごめん。
大好きだよ。ずっと愛してる。
でももう、大丈夫。
大丈夫だから。だからー…』
その時ー
不意に背中に舞い降りた温もりに
目の奥がジンと熱くなる。
あり得ない事だとは分かって居るけれど
突如奪われた彼女の温もりを
再び感じる事が出来たような気がして
これが、最後の挨拶のような気がしてー…
最後に会いに来てくれたような気がして。
ぎゅっと目を閉じ流れ出しそうな涙を堪えると、背後を振り返る。
そして……
「…なんだよ?」
「いえ、貴方かぁー、と…」
「はぁ?」
なんとなくそこに安積が居てくれたらなんて思ったのだけれど、残念ながらそれは叶わず。
それはそうだ。安積は先程から変わらずずっと隣に寄り添ってくれている。
小さな溜め息と共に突然向けられた視線と残念そうな班乃の表情に訝しげな表情を浮かべる市ノ瀬と、そんな状況を隣から不思議そうに眺める安積2人に曖昧に笑って誤魔化した。
「ねぇ、あっきー。俺も手、合わせて良いかな?」
「え? えぇ、勿論。駄目なことなんてないですよ。でもどうして突然?」
「前はさ、何も知らなかったし会ったこともない始めましての俺が手を合わせるのってどうなんだろうって思って出来なかったんだけど…やっぱり親友の大切な人には挨拶したいなって。それに…」
「それに?」
「えっと……なに変な事言ってんだって思うかもだけど」
「ええ」
「居た気がしたの」
「はい?」
「楓さんが」
「………」
「なに言ってんのお前…」
「ですよねー…いい、いい、やっぱ今のなし…」
自分の発言を恥じるようにパッと視線を反らした安積はなにかを探す様にキョロキョロ辺りを見回した後、班乃へと申し訳なさそうな表情を向けた。
「ごめん。ちょっと気が回らなくて…お線香あったらもらっても良いかな?」
「えぇ、勿論」
「…俺も良いか?」
「はい。ありがとうございます」
「さんきゅー」
「楓さん、ちゃんと用意してこれなくてごめんなさい」
墓石に向かって謝罪を口にし線香を供えると目を閉じ手を合わせた安積達を横目に眺め、墓石へと視線を移す。
自分もと思ったのだが
いくら手を合わせたとしても
そこにはもう彼女は居ない気がしてー
「…安積」
「ぅん? なに?」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951


チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。

BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる