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- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟む“ 探すの手伝います ”
そう、言いたい筈なのに。
いつもなら躊躇なく言える筈なのに。
だって今日はー
“ そんなんが良いの ”
と笑った市ノ瀬の顔が頭を駆け抜ける。
今日1日は、彼への贈り物で
そうしたいって、自分だって思ってて
彼が望んでくれるなら何日だって
例え望んでくれなくてもいつだって
同じ時間を過ごしたいって思ってて
嘘じゃないけど、だけどー
「…なんか良くわかんねぇけど、心当たりあるのか?」
「えっ?」
「明が居そうな所」
「……えっと、居るかどうかは分からない、けど…1ヶ所だけ」
「そう。じゃぁ、行くか」
「えっ?」
「なに? 行かないの? 探しに」
「…でも」
「嘘ついてまで帰らないなんて普通に心配だし、探しに行きたいって思ってるんだけど。今日は1日付き合ってくれるんだろ?」
「………うん」
きっと市ノ瀬には自分が何に悩んでるのかなんてお見通しで、自分が何故班乃の居場所に心当たりがあるのかも、“ 知ってる ” の意味だって分からない筈なのに、それでもいつも見方をして決して責めずに優しい言葉を投げかけてくれる。
『ズルいだろ。こんなん、もうー』
好きになれない訳がない。
「で、心当たりって?」
「あっ、そう。それなんだけど…」
班乃の姉へと向き直った安積はその心当たりを口にしたのだがその声は小さく市ノ瀬の耳には届かなかった。しかし彼女には確かに聞こえたようで、驚いたような表情を浮かべたあとしっかりと頷く。
「じゃぁ、私は他に行きそうな場所探してみるから」
「はい。よろしくお願いします」
「…迷惑かけてごめんなさい。こちらこそ、弟の事、よろしくお願いします」
「はい、じゃぁ、お気をつけて」
「あー、待て待て」
挨拶を交わし各々別の方向へと走り去ろうとする2人を呼び止める。当たり前に分かれようとするから一瞬迷ったけれど、始めましてな訳だから知っているとは思えなくて。
「2人とも、連絡先知ってんの…ですか?」
どちらに話しかけようか迷い変な敬語になってしまったが、まぁ、良いだろう。
「一応、交換しといた方が良いと思うんですけど」
自分を見たまま固まった2人に再度声をかけると、慌てたように携帯を取り出し始めた。
『大丈夫かこいつら…ってか、本当に明の姉かよ』
焦る気持ちは分からなくもないけれどあまりの抜けっぷりにそんな感想が思い浮かぶ。
『まぁ、だからこそ明がしっかりしたのかもだけど』
「えっと、LINEで良いですか?」
「はいっ、大丈夫ですっ!」
「じゃぁ、俺が読み込むんでQRコードお願いします」
「えぇ。えっと………QR、コード」
「あっ、1回ホーム画面行ってもらって、右上の…」
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