807 / 1,142
- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟む驚愕し無駄に大仰しく叫ぶ安積の肩を鷲掴み回れ右させた市ノ瀬は風呂場へとその背中を全力で押し出したのだが、2~3歩進んだ所でブレーキをかけ再び舞い戻ってくる。
「えっ、えっ!?本当に!?」
「戻ってくんなしっ!旨くなくても喰えるものくらい出せるわっ!」
「いやっ、違うっ!!そーじゃなくてっ、違くてっ! えっ、作ってくれんの!?ちょー嬉しい!」
「……っ、ラピ○タ飯なっ!」
「あっ、好きっ!! チーズかマヨで囲んで欲しいっ!あと仕上げにブラックペッパーもっ!」
「分かった分かった!」
「あっ、ベーコンもっ!!カリカリでっ!!」
「注文多いなっ!?」
「楽しみっ!! ありがと睦月っ!!」
両手を握りしめ辺り一面に花を撒き散らしながら軽やかな足取りで風呂場へと消えて行く安積を見送った市ノ瀬は呆れたようにため息を付いた。
『食事1つくらいで大袈裟なやつだな…』
しかし裏を返せばそれだけ自分がご飯を作るのは珍しいと言う事だろう。更に班乃や植野、鈴橋といった料理男子に囲まれているのも手伝っているのかもしれない。
『ぶっちゃけ料理とかクソだりぃけど、こんな喜んで貰えるならレパートリー増やしてみるのもあり…かもな』
安積の喜ぶ顔を思い浮かべただけで自然と浮かんだ自身の笑みにも気がつかぬまま、市ノ瀬は有言実行に食事の支度に取りかかった。
「この旨さっ!味覚バルスレベルっ!!」
「崩壊してどうする…」
「睦月天才っ!」
「そりゃ、どうも」
風呂上がりの良い匂いを振り撒きながらテンション高めに飛び込んで来たかと思うと一直線にソファーに座り、それと同時に手を合わせ声高々に頂きますと叫びパンへかぶりついた。
一口食べただけでバルスするのはどうかと思うけれど、それだけ美味しいと感じてくれたのなら作った甲斐があったと言うものだ。
あまりにも満面の笑みすぎて逆にこんな簡単なもので申し訳ないとも思ってしまうけれど、簡単でも手の込んだ物よりも美味しいものだって中にはあると気にしない事にした。
「そうだっ!!今夜なに作ろうか決めようよっ!」
「今?」
「うんっ!」
「食いながらよく飯のこと考えられるな」
「だって楽しみなんだもんっ!」
「そう…。そうだな、なに作るか、かぁー」
「クリスマスと言えばっ!?」
「クリスマスと言えば……まぁー」
「あっ、待って!! せーので言おう!!取りあえず、これっ! ってやつ!!」
片手を突き出し市ノ瀬の言葉を制すと “ これ ” と言うものを考えているのか難しい顔をして顎に手をあてた。
『んな難しく考えなくてもパッと出てくる物なんてそんなないだろ。…ないよな?』
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる