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- 26章 -
- それは白く輝く -
しおりを挟む驚愕し無駄に大仰しく叫ぶ安積の肩を鷲掴み回れ右させた市ノ瀬は風呂場へとその背中を全力で押し出したのだが、2~3歩進んだ所でブレーキをかけ再び舞い戻ってくる。
「えっ、えっ!?本当に!?」
「戻ってくんなしっ!旨くなくても喰えるものくらい出せるわっ!」
「いやっ、違うっ!!そーじゃなくてっ、違くてっ! えっ、作ってくれんの!?ちょー嬉しい!」
「……っ、ラピ○タ飯なっ!」
「あっ、好きっ!! チーズかマヨで囲んで欲しいっ!あと仕上げにブラックペッパーもっ!」
「分かった分かった!」
「あっ、ベーコンもっ!!カリカリでっ!!」
「注文多いなっ!?」
「楽しみっ!! ありがと睦月っ!!」
両手を握りしめ辺り一面に花を撒き散らしながら軽やかな足取りで風呂場へと消えて行く安積を見送った市ノ瀬は呆れたようにため息を付いた。
『食事1つくらいで大袈裟なやつだな…』
しかし裏を返せばそれだけ自分がご飯を作るのは珍しいと言う事だろう。更に班乃や植野、鈴橋といった料理男子に囲まれているのも手伝っているのかもしれない。
『ぶっちゃけ料理とかクソだりぃけど、こんな喜んで貰えるならレパートリー増やしてみるのもあり…かもな』
安積の喜ぶ顔を思い浮かべただけで自然と浮かんだ自身の笑みにも気がつかぬまま、市ノ瀬は有言実行に食事の支度に取りかかった。
「この旨さっ!味覚バルスレベルっ!!」
「崩壊してどうする…」
「睦月天才っ!」
「そりゃ、どうも」
風呂上がりの良い匂いを振り撒きながらテンション高めに飛び込んで来たかと思うと一直線にソファーに座り、それと同時に手を合わせ声高々に頂きますと叫びパンへかぶりついた。
一口食べただけでバルスするのはどうかと思うけれど、それだけ美味しいと感じてくれたのなら作った甲斐があったと言うものだ。
あまりにも満面の笑みすぎて逆にこんな簡単なもので申し訳ないとも思ってしまうけれど、簡単でも手の込んだ物よりも美味しいものだって中にはあると気にしない事にした。
「そうだっ!!今夜なに作ろうか決めようよっ!」
「今?」
「うんっ!」
「食いながらよく飯のこと考えられるな」
「だって楽しみなんだもんっ!」
「そう…。そうだな、なに作るか、かぁー」
「クリスマスと言えばっ!?」
「クリスマスと言えば……まぁー」
「あっ、待って!! せーので言おう!!取りあえず、これっ! ってやつ!!」
片手を突き出し市ノ瀬の言葉を制すと “ これ ” と言うものを考えているのか難しい顔をして顎に手をあてた。
『んな難しく考えなくてもパッと出てくる物なんてそんなないだろ。…ないよな?』
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