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慰弦

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- 26章 -

- それは白く輝く -

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これから思いを伝えようとしているタイミングでのこれはかなりよろしくない。好意のこの字もあったもんじゃない。

『…どうしよう。こんなんじゃ好きだって伝えた所で言葉の重みが…こうなったら一緒に買いに行くしか…』

しかし1人悩む安積と違い渡した物に関して不備があったわけでは無かった事に安堵した市ノ瀬は、のそのそと起き上がり一度体を伸ばすと怒られた子供のようにその場に固まる安積の前へと移動する。


「そんなに申し訳ないって思うなら、今から欲しいものあるんだけど」

「本当っ!?全然OK…ってかむしろありがとうっ!」

「ありがとうって…」

「買い物行く時見に行こっ! えっと、どこに売ってるの?」

「ここ」

「……ここ?」


不思議そうに見上げる安積の頬を両手で挟んでじっと見つめると簡単に赤く染まる様子に笑みがこぼれる。感情がこうも素直に出る様は何度見ても飽きる事はない。


「えっと…欲しいものって?」

「時間」

「……時間?」

「今日1日、お前の時間くれたら良いよ」

「そっ…んなんで、良いの?」

「そんなんが良いの」

「ーっ、分かったっ!1日でも2日でも3日でもっ!!全然良いよっ!!」

「そんな安売りすんなってw」


パンパンと頬を叩くと今にも鳴きそうなお腹を満たすためにリビングへと足を向けた市ノ瀬の後ろ姿を見送った安積は気付かれないようにひっそり息を吐いた。

元々ハッキリと物事を言うタイプではあるけれど、こう言った好意的な台詞でさえハッキリと口にするものだから困ってしまう。

…嫌と言うわけではないけれど。

いつも振り回されてばかりで少し悔しい。

『それに俺だって…一緒に居られるのは嬉しいし、これじゃ贈り物にならないよ。…でも』

自分がそう思うのと同じように市ノ瀬も自分との時間を大切に思ってくれているという事が凄く嬉しい。舞い上がる心を落ち着かせ…る事もなく市ノ瀬を追いかけるようにリビングへと足を向けた。


「ねぇ睦月っ!朝ごはんなんにしよっか!?」

「飯ねぇ。それよりお前、風呂は?」

「えっ、ごめん…もしかして臭う?食べてからでも大丈夫かなって思ったんだけど…」

「別に臭かねぇよ。でも気持ち悪いだろ?先入ってこいよ」

「でも腹減ったし、ごはん作んなきゃだし」

「作っとくよ。簡単なのしか出来ねぇけど」

「えぇっ!!?」

「うるせぇなぁ」

「pardonっ!!?」

「I'll cookっ!!」

「 Reallyっ!?」

「Shut upっ!! 良いから早よ風呂行けっ!」
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