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慰弦

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- 26章 -

- それは白く輝く -

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いつもならそんな子供じゃねぇと突っ込みの1つも入れるところだけれど今はそれどころじゃない。

箱から取り出した贈り物を両手に乗せて眺める。
それは藤色に黄色を足したような、何色なのかはうまく言い表せないけれど曖昧でいてどこか落ち着いた色合いをしており、1人暮らしを始めた当初から持っていた方が良いと思いつつもなんだかんだ買うのを後回しにしてしまっていた物でー


「見てて怖かったんだよ…いつか失くすんじゃないかって。キーホルダーすら付けねぇで…いつも裸でポケット突っ込んでたから」

「……すっごい観察力」

「そりゃ、見るだろ。…好きな奴のことは」

「そっ、そっか………」


『どーしてそう言う事さらっと言うかなもうっ!?』

火照る顔を慌てて背け窓辺へと移動すると、カーテンの隙間から差し込む日差しに贈り物をかざし照らし出された姿をまじまじと眺める。


「………」

「気に入らなかったか?」

「そんな訳ないじゃんっ!自分だとあんまり選ばない感じの色だから新鮮だなぁって…すっごく綺麗。なんかずっと眺めてたくなるw本当ありがとっ!!めっちゃ嬉しいっ!!」

「そ。それは良かった」


大事そうに両手で包み込むように持ちお礼と共にパッと咲かせた笑顔の眩しさに目を細める。こんなに喜んで貰えるなら頭を悩ませ選んだ甲斐があったと言うものだ。


「あっ、でも………」

「なに?」


しかし直ぐ様その笑顔を曇らせた安積は一瞬目を泳がせたかと思うと、申し訳なさそうにバッと頭を下げた。

『…なんだ?なにか不都合でもあるのか?』

理由は分からないがなにかしら使えない理由があるとか、実は既に所持していたとか…。もしそうならそれは自分のリサーチ不足であり安積が謝る事ではない。むしろ折角のクリスマスプレゼントに使えない物を渡してしまったと謝るのは自分の方だ。


「ごめんっ…実は俺、なんも用意出来てなくて…」

「…あぁ、なんだ、そんな事」

「そんな事じゃないだろっ」

「良いよ別に。お前は」


『別に良いって…』

恐らくこの別に良いよと言う言葉は“いらない”“欲しくはない”という理由ではなく、準備していなかった自分を気づかっての言葉だろう。

『だって好きな人から贈り物されたら…こんなに嬉しいんだから。睦月だって欲しくないわけじゃなかった筈…だよね』

市ノ瀬へのプレゼントを用意しようと思っていたのは嘘ではない。本来なら班乃の誕生日会が終わったらひっそり買いに行く予定だったのだが、あまりの疲労に仮眠しようと思ってしまったのが悪かった。
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