Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
804 / 1,142
- 26章 -

- それは白く輝く -

しおりを挟む


あー、外明るい、もう朝か
起きる?
いや、でもまだ気持ち良さそうに寝てるし
起こしちゃ悪いし
なんかすっごく穏やかで
すっごく心地良いし
もうちょっとこのままで…
もうちょっとこのままでー…

何度も目を覚ます度そんな事を思い浮かべながら再び目を閉じる。

お互いすれ違うようにして目を覚ましてはそんな幸せの微睡みを繰り返し、先に起き上がったのは安積だった。

なんだかんだ疲労から風呂にも入らず寝てしまった為気持ち悪さが全身を包み込んでいる。今の内にさっぱりしてこようと起こさないよう立ち上がり大きく伸びをする



ベッド横の小さめの棚に見覚えのない物が置かれているのが目に止まった。おしゃれな包装紙で包まれ、小さなリボンがシールが貼られている。

そっと市ノ瀬へと視線を投げるがその目はまだ閉じられており、再びそれへと目を向け直す。

見るからに送り物として包装されているそれは自分が置いたものではなく、寝る前まではなかった物だ。

突然姿を表したそれを用意出来るのは自分が寝ている間もこの家に居た市ノ瀬1人しか居ない。

市ノ瀬が自分自身の為にこんな所にこんな物を置いているとは思えないし、市ノ瀬以外に今この家に居るのは自分しか居ない。

とすると、これはー……

寝起きの頭に突然発生した状況に、そのあまりにも予想していなかった事実に、推理とも呼べない推理を巡らせた後おずおずとそれに手を伸ばした。

なるべく音を立てないように包装紙を外し出てきた白い箱をしばし眺める。決して開けたくない訳ではなく自分に宛たものではないと思っているわけでもない。

何が入っているのかというドキドキや彼が自分の為にとわざわざ用意してくれたと言う嬉しさで頭が一杯になり上手く行動に移すことが出来ない。

目を閉じ深く深呼吸すると、ゆっくりとした動作でその箱をあける。


「……これって」

「めり…くり…安積」

「っ!?」

「…はよ」

「おっ、おはようっ!?」

「…………」


まだ眠たそうに枕へと顔を埋め再び口を閉ざす市ノ瀬の様子にもう一度寝入ってしまったのかと思われたが、なんとか起きる方向に向かおうとしているようでくぐもった声でゆったりと口を開いた。


「…サンタは…本当は…明日だけど…別に良いかな…って」

「……う、うん」

「ってか…俺…サンタじゃねぇし…サンタからって渡したかった……わけじゃねぇし」

「うん…」

「ってか、さすがに…サンタ…信じてるわけでは、ないだろうし」

「…それは、もちろん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...