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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む申し訳なさが先だってしまったけれど、ノイズキャンセリングつきのイヤホンは使った事がない上、称賛の声も多く聞くので実際どれ程の物なのかとても気にはなる。
音楽をかけるため、電源を入れ耳に入れるー
と、直ぐに取り外し神妙な面持ちで2人を見やった。
「えっ、どうしたの?」
「………」
「どうした? まさかの初期不良?」
「……すご。急にしんとなった」
「おい、どうした口調ww」
「あっ、あぁ、すいません。少々想像以上だったもので…」
「いや、別に謝るこたねぇけどw」
「そんなに凄いんだっ!?w」
「えっと、音楽かけてみますね」
気を取り直し暗記中に良く聞く音楽を流すと2人に向けて指でOKサインを向けた。
果たして中域特化の実力とは?
班乃の合図に安積が口を開こうとしたその時ー
「明」
「えっ?」
それよりも前に安積へと視線を向けたままの市ノ瀬が班乃の名前を呼んだ。
「俺、安積ですが…」
「んなこた分かってるよ」
顔は安積へと向けたまま横目で班乃を見ると、特に反応は示していない。どうやら本当に聞こえてないようだ。ならー
「安積」
「うん?」
「明日ー」
「えっ、う、うん?」
「デートするか」
「でっっ!!?」
明日という単語に一瞬にして胸が高まる。なんとか過剰な反応を押さえ込みはしたものの、その後に続く思いもよらない申し出にうっかり飛び出した大きな声を口を押さえてなんとか押し込めた。
ちょっと漏れてはしまったけれど…
『いやっ、ホントはまったく予想していなかったわけじゃないけどさっ…でもこのタイミングっ!?』
「えっと、どうかしました?」
「あっ、あっ…あっきー!? 今の会話聞こえてた??」
「いえ?一瞬だけ貴方の大きな声は聞こえましたけど、それ以外はなにも」
「そう、良かったっ…」
「なに話してたんです?」
「特別なにも。ちょっと冬休みの予定話してただけ」
「そうですか」
『ちょっとってなんだよ、ちょっとってっ!!』
イヤホンを外し何事かと伺うような班乃に対し、何事もなかったかのようにしれっと嘘をつく姿にある種の恐怖を覚える。
それは市ノ瀬が本気で嘘をつこうとした時は見破れないかもしれないとも思えるほどだ。
「まぁ、良いじゃん! 本当に聞こえないんだねそれ! すご!!」
「えぇ、流石に叫び声は聞こえますけど。普通の会話は殆ど聞き取れないですね。本当に、ありがとうございます。こんな良いもの…嬉しいです」
「そう言って貰えて皆も喜ぶと思う!!」
『…ホント良かった。妥協する事にならなくて』
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