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- 26章 -
- 貴方に送る祝福と -
しおりを挟む『しかし、さっきのはあれだな…ちょっときたな…』
凄く大切な人からの受け売りだと言い窓に映る自分の影を安積の指がなぞった。その仕草に心臓が鷲掴みにされ、側にあったクッションで叫びだしそうになる気持ちをなんとか押さえ込んでいだのだった。
『……自惚れそう』
好意を向けてくれてるのは間違いない。
が、その好意の意味は今一確信が持てない。
元々誰に対してもスキンシップが多く、好意を余すことなく素直に口にするタイプだ。
親友と口にする相手にさえ、頬に触れて手を握りあってしまうような人間だ。
あの口から
“ 睦月は親友だ ”
と飛び出した所で
“ あ、そうですよね ”
と思ってしまう自信すらある。
同じ毛布にくるまり好きと言ったあの言葉でさえも、親切にしてくれた親友に対する言葉と言われても納得出来てしまう。
『しかし、よくもまぁ…俺の前で堂々と』
計りかねる好意の意味にスッキリしない気持ちを班乃へと向け半ば八つ当たりのように心の中で悪態を着く。
安積の性格を分かっている上で避けるのを止めて欲しいと言ったのは自分なのだし、今更責められる立場ではないので口には出さないが、思うだけなら自由だろう。
「睦月、寝た??」
「……ぁー、ちょっと寝てた」
『全っ然起きてましたけどね』
寝てた事にしておいた方がなんだか都合が良い気がして肩を叩く安積に適当に嘘をつき上体を起こす。
屈んで覗き込んで来たその首に今すぐにでも両手を回し抱き締める事が出来たなら。堂々とこいつは俺のだと言う事が出来たなら。
溜め息をつくとそれが眠気からだと思ったのか、両肩をポンポンと強めに叩いた安積がニッコリと笑った。
「起きて起きてっ!!ケーキ食べようっ!!」
「おぅ」
頼まれたまま班乃を連れて来ただけで安積作のケーキを食べられるなんて、市ノ瀬にとって棚からぼた餅である。
ご機嫌に鼻歌を歌いながら切り分ける安積を眼前にぼんやりと考えるのは明日に控えたクリスマス。
2日連続ケーキというのはどうなんだろう、と。
買うも作るも決めていないし、まだなに1つ伝えてすらないのだけれど。
『お互い甘いの好きだし、こう言う時くらい連チャンもあり…か?』
食べた分動けば良いだけだし。
「あっきー!!」
「はい?」
「はいっ!!」
切り分けや飲み物の準備も終え食べるだけの段階で安積が小さい袋を班乃に向けて差し出すと、一瞬不思議そうに眺めた後、嬉しそうに笑った班乃は両手で丁寧に受け取った。
「あっきー!」
「はい」
「お誕生日……ありがとうっ!!」
「「……ありがとう??」」
『おめでとうじゃなく??』
あまり聞きなれない言葉の羅列に声を揃えて安積を見ると、なんだか照れたように笑った安積が小さく首を傾げた。
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