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慰弦

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- 26章 -

- 貴方に送る祝福と -

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通話を切ると寒そうに両肩を上げマフラーへと顔を埋めた市ノ瀬はインターフォン横に背中を預けた。


「あと2、3分待てだと」

「そうですか」


『もう少し余裕もって連絡してあげれば良いのに』

特に会話することもなく中から微かに聞こえる慌ただしい音に耳を傾ける時間をいくらか過ごすと、フェードインしてきたバタバタという音が間近で止まり勢い良くドアが開いた。


「おまたせっ!!おはよー2人とも!!」

「おはようございます、安積」

「……お前、ドア前に立ってたらどーすんだよ。危ねぇーだろ」

「大丈夫っ、ドアフォンで確認したから!まぁ…睦月は見えなかったけど、あっきーは大丈夫そうだったから良っかなって!」

「よくねぇよ」

「良いじゃん細かい事はっ!寒いでしょ? 早く上がんなよ!」

「細っ……」


ぞんざいな扱いに表情を固めた市ノ瀬の背に哀愁を感じ、同情を込めて軽く肩を叩いた班乃は安積宅へと一足先に上がり込んだ。

電気も消されカーテンも締め切られているが、うっすら見える暗がりの部屋にいつもと変わった様子はない。手招きに促されるまま窓付近へと向かうと市ノ瀬が来るのを待つ。

2人が揃ったのを確認した安積は窓を背に悪戯を企む少年のような表情を浮かべるとカーテンへと手を掛けた。


「良い? 行くよ?」


『『行くよ?』』

行くよと言われても…
何がなんだか分からないまま2人が小さく頷くと、一気に左半分だけのカーテンが開かれた。

そこに佇んでいた物たちは………


「えっと…これは」

「…なんだこれ?」

「なんでしょうっ!?」


『『なんでしょうって……』』

嬉しそうに笑う安積を横目に班乃は窓へと近づきしゃがみ込んだ。窓の外にあるそれをしばし眺めると、遅れて隣にしゃがみ込んでいた市ノ瀬へと目を向けた。

険しそうな表現でお互いを見つめると、今一度窓の外へと目を向ける。


「………」

「……………」

「あっ、分かった!」

「分かったんですかっ?」

「これ、あれじゃね? シュ○ック!?」

「……あっ、あぁ、成る程。じゃぁその隣は…お嫁さん、ですかね?」


開かれたカーテンの向こう、そこには色とりどりに着色された小さい雪だるま…のようなそうでないものがずらりと並んでいた。

とりあえず一番手前にあった緑色の物について予想を立てると、正解を求めるように見上げた2人の視線を受けた安積はなにも言わずニコニコ顔で頷いた。

どうやら正解だったようだ。

しかしだ。その2体の横にも緑色の似たようなものが並んでいる。
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